式場選び
「私たち、結婚することにしたから」
「結婚って、誰と」
スマフォに向かって思わず、顔をしかめる。
「そんなの決まってるじゃない、ひろしよ。他に誰がいるって言うのよ。やっと彼も本気になってくれて、これから、式場を回って、どこにするか決めようと思ってるの」
「あんた、大丈夫。彼なら、先週仕事先で死んだじゃない」
「死んだ? 変な冗談言わないで、彼なら今隣にいるわよ」
「と、隣って、あんたこそ、冗談は・・・」
「あ、ごめん、式場の予約に送れるから、もう切るね」
「ちょ、待ちなさいって・・・」
数時間後、私は、事故死した彼女と対面した。本当に式場に見学の予約をしていて、その予約時間に間に合わせようと車を運転して事故を起こし、即死した。もちろん警察に聞いたが、車に乗っていたのは彼女だけだった。その死顔は幸せそうで、もしかしたら、あの世で彼と式場探しをしているのかもしれなかった。