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54.できる限りの、高速

 ブロッサム・ニンジャの右肩からせりだすコンテナ。
 10メートルはあるけど、およそ50メートルのブロッサムの背中だとリュックサックに見える。
 頭のすぐ後ろから、ふたが開く。
「こんな近くでブロッサムの砲撃をみるの、ひさしぶり」
 私も今年はじめてだよ。
 ん?
「安菜、見たことあったっけ? 」
『MLRS、撃ちまーす』
 ウワッ!
 ブロッサムの青い機体が、オレンジ色のまばゆさに隠される。
 安菜の返事は、しのぶの声と爆音でかき消された。
 MLRSは訳すると多連装ロケットシステム。
 コンテナから飛びだす巨大なロケット砲が、雨を突っ切る。
 全部で4発。
 鋭く立ち上がる山の、深い谷を飛び越えて、山の向こうに落ちて・・・・・・。
『弾着! ハズレなし!』
 しのぶが、真剣な声で報告した。
 弾着の様子はハンターキラー仲間がヘリコプターで撮影してくれる。
 その視界の下からは、ロケット弾の火が次々に飛んでいく。
 この谷のつづき。
 海に向かって広がって、街としても大きくなったあたり。
 そこでも切り立ちながら見下ろす山々に、4つの閃光がまたたいた。
 それが、合図。
「行け! 行け! 行け! 」
 私は叫ぶと、同時に飛び上がった!
 背中と足の裏からジェットを噴射。
 一気に加速する。
 同時に、スカートを手で広げる。
 腰から左右にのびた赤い鉄板2枚。
 中のプロペラが風を起こして、機体を安定させる。
 後ろを見ると、ブロッサムも同じ格好で空を飛んでいた。
 ディメンション・フルムーンと並んでる。
 私のとなりには、パーフェクト朱墨がいるよ。

 ロケット砲の爆心地が見えてきた。
 土がえぐられて、周りの木もなぎ倒されてる。
 そばには、こん棒エンジェルスのポルタ。
 そして頭上には、雨に逆らって飛ぶ、ハンターキラーのヘリコプターや戦闘機たち!
 それに、雷切!
 爆心地の周りに、さらに攻撃を加えてくれる。
 私は、その爆心地を飛び越えた。
 目指すのは、この向こう!
 後ろでの爆心地で、ブロッサムが着陸する気配。
 爆心地がもう1つ見えてきた。
 こっちでもダメだしの攻撃がつづく。
 その度に、木々が歪む。
 痛そう!
 だけど、爆発に関係なく、歪む木々もあった。
 あそこが、着陸点!
 
 攻撃がやむ。
 今度は私が木々を歪ませて、着地する!
 右に下る、山の途中へ。
 足を踏ん張る。
 なんとか停止した!
 左にはポルタ。
 私は手にしてた手榴弾を、放り込んだ。
 
 ドーン

 効果を確かめる間もない!
 山の下へ目をうつす。
 急な山を下りればすぐ川があって、その向こうが百万山市。
 ここはホクシン・フォクシスの基地がある、あの山のならび。

 ポルタたちは、曲がったりぶつかったりしながら、4つは山に引っ掛かるように止まったの。
 ちなみに、1つは海に落ちたよ。

「見つけた! 」
 また、AIより早く安菜が見つけた。
 指し示された指にしたがって、かけだす!
 
 メリメリ

 腰から下に木の弾力がかかる。
 押し戻す力に逆らって、すすむ。
 足下の土は雨水を巻き込んで、土砂崩れみたいになる。
 泥が足にまとわりつく。
 それでも、木と雨の間からでも、足下の地形を見抜くAIは、さすがだよ。
 それでも。
「「そこだ!」」
 地形も何もかも無視して、ダイブ!
 勝手に揺れ動く木々! 
 そこに隠れた者を、土ごと抱えるようにして、つかまえた!
「「えーい! 」」
 なぜか安菜も叫ぶ。
 目標は両手でしめあげながら、立ち上がる!

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