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49.黒い打撃

 青白い光!
 谷間の道を通っていた人や車が、あおられる!
 爆砕シールドの、いつもより大きい炸裂だよ。
 雨を一気に水蒸気に変えて、爆砕に巻き込んだんだ。
 谷間の道は2台が、やっとすれ違えるほど。
 車の列が急ブレーキをかけてとまった。
 背筋に震えが走る。
 身を乗りだして見た。
 良かった。
 車列は急ブレーキをはずして、また走りだしてる。
 逆光に、黒く見える長い物が飛ばされた。 
 巨大な放物線を描いて山に突き刺さったそれは、こん棒だよ。
 やっぱり。
 りっぱに太った木よりも、大きい!
 
 不気味な相手だと思う。
 こん棒に対する、並じゃないこだわりを感じる。
 どんな相手なのか想像もつかない。 
 
 地上でポルタへの攻撃がはじまってた。
 先頭にいるのは、ルイン・バードさん。
 カーキ色のカザミドリがのる流線型ボディから、口径60ミリ砲をだして射ちまくる。
 ホクシン・フォクシスの北辰も攻撃を始めた。
 朱墨ちゃんがいなくて4機になったけど、上空のパーフェクト朱墨と、新しい戦いかたをものにしてる。
 青いキツネたちは、訓練場の外の森にいた。
 木々の間から砲撃が飛び掛かる。
 道がなくても、高機動ロボットたちには邪魔にならない。
 自衛隊もきた。
 施設科の武器は、装甲を施された四輪駆動車に自動小銃。
 最低限の組み合わせだけど、ここで戦うのは、すごいガッツだよ。
 その後ろからも、さらにハンターキラーの装甲車や銃がつづく。
 でも、打撃力が足りない。
 雨あられと降り注ぐ攻撃は、黒い大蛇をつらぬけなかった。
 私は叫んだ。
「ディメイション・フルムーン! ファントム・ショットゲーマー! 
 援護して!」
 これで、2人が突っ込んで衝突することはない。
 ウイークエンダーを降下させる場所は、決めた。
 こん棒が当たらないように、すばやく左右に動きながら。
 それでも、パーフェクト朱墨にくらべればおそすぎる動きだった。
 優れている点があるとすれば、装甲と地上での機動性くらいだ。
 アレ?
 レーダーにポルタの中にあった金属反応が、ない?
 私はハンターキラーたちの上を、かすめるように飛んだ。

 ポルタの中に、見えた。
 むこうは、青空と、砂でおおわれた広場だった。
 地球のグラウンド、そっくり。
 そこに、黒い巨大な何かがたっていた。
 人間の腕みたいなもの?
 肩の部分を地面においてる?
 その横に、例のこん棒が山積みされてた。
 なるほどね。
 あの腕は投げつけに集中する。
 ポルタの出口を動かして、狙いを定めるわけか。

 水溜まりで滑ったけど、問題なく着地!
「グブッ!」
 あっ? 苦しそうなうなり!
 きつかった?! 安菜?!
「いえ、大丈夫。やっちゃって」
 お、仰せのまままに。

 ポルタから、黒い腕が飛びだしてきた。
 その手には、あのこん棒がにぎられている。
 もしかしたら、黒いものの先に、こん棒はつきささってるのかもしれない。
 動きからして、腕ではなく大蛇の化け物かもしれない。

 私は、ウイークエンダーの腕の装甲をスライドさせる。
 拳を守るためだ。
 しっかり中の取っ手を握りこみ、固定する。
 分厚い、鋭く角度が付いた装甲は刃物としても十分なんだ。

 それにしても、気になる。
 あの腕を形作る黒い物について。
 燃え盛る炎のようなスピードで、地面をすべる。
 まるで大蛇だ。
 その炎は、キラキラと宝石のように輝いている。
 アレは、地球の一般的な物理法則ではあり得ないものだ。
 私のポケットに入った、昴さんからもらったエニシング・キュア・キャプチャー。
 つまり、ルルディの魔法炎にそっくり?!

 ルイン・バードさんたちの攻撃は、こたえないみたい。 
 ならば!
 私は、飛びだした。 
 ねらうのは、こん棒をにぎる、手!

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