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発見。



 そしてキヌさんの祠とヌエの祠を結ぶ線上、ちょうど中間あたり。

「あー、」

 俺達は『それ』を発見した。

「あるにはあったな…けど」

 発見したダンジョンはなんというか…巨大だった。

 巨大な石柱が二本、螺旋状に絡み合いながら塔のようにそびえたっている。【大解析】を発動すると、


「『ダンジョン統合体』…て、マジか」

 ここでウンチク。

 ダンジョンという生物は縄張り意識が物凄く強い。つまりダンジョン同士で仲良くするとかありえない。

 やつらはしょっちゅう喧嘩していて、人間側がそれに巻き込まれるなんてのは前世ではよく見た光景だった。

 それはもう眷属であるモンスターが戦争さながらにぶつかり合うわ、支配領域下で天変地異を引き起こすわ、決着がつく頃には辺り一面死屍累々の荒野と化す程だ。

 そしてもっと最悪なのがそれで終わりじゃないって事。

 潰しあって弱体化してくれたらいいのだが、奴らに限ってそれはない。勝った方が相手を取り込み、このような『統合体』となって、つまりはさらに強大なダンジョンへと変貌を遂げる。

 それが人類に良い影響を及ぼした、なんて話も聞いた事はある。でも蜜月に見えたそれが罠だったというのが殆んどだ。

 相手は侵略者、良好な関係がいつまでも続くなんて思ってはいけない。

 実際前世で聞いた話だと、騙された人間側がいつの間にか全員眷属にされ奴隷以下の扱いを受けたり、無垢な魂…つまりは子供の命を定期的に差し出せ、なんて条件を飲まされたりと、悪魔がやるような手口だったらしいからな。

 ただ、目の前にあるダンジョン統合体は、ちょっと様子がおかしい。

 ここまで聞いた話だと、これがヌエの祠を襲撃したダンジョンとキヌさんの祠を襲撃したダンジョンの統合体であるのは間違いなさそうだが、戦った痕跡がまるでないのだ。

 もし戦ったなら、ここにたどり着くまでにその痕跡を発見出来ていたはず。でもそんなものはなかった。山林を走る途中でいきなり視界の中にデッカイ塔が飛び込んできた感じだ。

「んー。ものは試しに潜ってみるか?」

「え、大丈夫なの?」

「いや『餓鬼ダンジョン』の時みたいに即日攻略なんて無茶はしな…──いや、それもどうだろうな…」

 このダンジョンがまた『殲滅攻略型』だったりしたら?入場した途端に攻略を強制されてしまう。

(それを思うと迂闊には飛び込めないんだよな…)

 いや、俺一人なら多分何とかなるだろうが…その場合ヌエとキヌさんに才子と密呼ちゃんを預ける形になってしまう。

 でも大事な誰かを預けられるほど俺はまだ、この霊体夫婦を信用してないんだよな。

(でもなー、今回も相変わらずなんだよな…時間はあまり残されてない…)

 仲間達の危機なら一応は取り除けたが、今度は俺の生まれ故郷に危機が迫っている。

(残された期限は多分…一週間、くらいか?)

 それまでにやらなきゃならない事は山ほどある。ここで足踏みしてる暇は…

「うーん、ないんだよな…さて、どうするか…………

 ………

 ……

 …うん、やっぱり、潜っちまおう」

 どんなダンジョンなのか知らないまま放置するのはやはり危険だ。なので、

「キヌさんと密っちゃんと才子は周辺の探索をお願いします。良さそうな素材があったら必ず一つは採取しといて下さい。村の資源となるので…あとこれ、人数分の編みかごとか袋とかあるので、この中にでも入れておいてくれれば…」

「はい~お借りしますね~」

「ちょっ、キヌさん普通にスルーした?いやいやいや、均兄ぃそれ、今どっから出したの?」

 さっそく食い付いてくれてホッとする俺の感覚も大概おかしくなってきた。でも、

「──スキルだ。」

 この一言で誤魔化しておくか。だって『俺の中に異次元空間があってだなー』まではいいが…他の部分が説明しにくいんだよな。

 才子を少し驚かせたこれが何のスキルかと言えば、【内界】だ。

 ラノベやゲームで言う所の【アイテムボックス】とか【インベントリ】とか【ストレージ】とか?そんな感じで使えるかなーとやってみたら出来てしまった。

 というか昨日ヌエと対峙した際、いきなり俺の手に木刀が出現したのは、無垢朗太がこの【内界】を利用して握らせてくれたからだった。つまりは『換装機能』まで──

(いや、それくらい出し入れが簡単で思いのままって事か。なんせ俺の一部な訳だから)

 それにまだ狭いと言っても物置小屋くらいはあるみたいだからな。結構な量が入る。

 …けど。無垢朗太の棲み家も兼ねてるからか、たくさん入れてみると不機嫌そうな気配がしたので途中でやめた。

 そしてやはり『生物』は保管出来ない感じだ。でも無垢朗太がイケるんなら霊体とかならイケるかも?とか思ったがそれはしない方がいいだろう。

 あと、中の時間が止まってたりはしない。時間をおけばしっかり劣化する模様。

 それでも便利だ…じゃない。話が大分逸れてしまったな。

 とにかく、俺達はこれから別行動をとる。だから、

「日が暮れそうになっても俺達が帰ってこない場合は一旦、鬼怒守邸に帰還して下さい」

 と、大雑把もいいところだが一応の段取りみたいなものを告げると、

「えー?大丈夫なの?」
 
 と、才子はまた心配顔だ。でもその横では元気に可愛らしい手を振っている密っちゃんがいて。その頭を撫でるキヌさんの顔は、

「は~い。お気をつけて~♪」

 慈愛に満ち満ちてる…な。

(うん、大丈夫そうだ)

『いや大丈夫じゃないだろう』

 ヌエを警戒して無言だった無垢朗太がその警戒を顕にした。ということは…

(まさか、あんな優しさで満ち満ちてそうなキヌさんまでヤバい人…だったりするのか?)

『いや、あの女の力は確かに恐ろしいが性格は温厚そのもの。あの二人を預けても害をなす事はなかろう。我が心配しておるのは、このっ、サルネコよっ!』

(あーこっちか)

「ブツブツ…にゃんで我がこんな人間風情と組まねばにゃらん…しかも命令されて…ブツブツ…いや、これは今度こそ息の根を止める好機やも…ブツブツ」

『ほれぶつくさと不穏な空気を醸しおって…というか丸聞こえだこのっ、バカでザルなガサツネコめがっ!こんな者と二人っきりなど危険も危険っ!やめておくのだ均次っ!』

(つってもなー、大家さんと義介さんを呼びにいく時間ももったいない…というか、二人には頼んでる事あるし…才蔵はまだ魔力に覚醒してないし。他にいい案がねんだよな)

『おい人間、今心中で良からぬ事を……やはりここで殺──』



「お・ま・え・さ・ま?い・い・加・減に──」



「にゃ、にゃんでもにゃいぞキヌよ?しっかりと活躍して見せるからにゃ!楽しみにしておれ!」

「はい~、頑張って♥️お前様♥️」


 うん。結構なバカップルぶりだが、その実態は重度のかかあ天下と見た。だから、


(大丈夫…て事にしとこう)


『う~~むっ!どうなっても知らんからなっ!』
 

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