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34.天の横ヤリ

「そこから先は、みなさんご存じではないですか?」
 アーリンくんの質問は、当然だね。
 だけど。
「私、存じない!」
 アーリンくん、朱墨ちゃんのことをあきれないであげてね。
 私たちのライフスタイルにはいろんな障害があるの。
「どんなに情報がネットにでてたてって、それをみる時間は少ないんだよ」
 素晴らしい晩ごはん、テレビのユウワク。
 そして、かなしき宿題。
「じゃあ、私が言おうか?」
 達美さん。
 そうですね。
 当事者なら、確実ですね。
「じゃ、見て」
 緞帳が、石川県から大陸につながる海の図になる。
 能登半島の大陸側から青い点がひとつ。
 まずは、ここの海。
 ポルタ社本社の目の前の海。
 青はそこからすぐ大陸付近に現れた。
 ポルタで瞬間移動したんだ。
 そこから海沿いに青線になってのびる。
 これはポルタ社の強襲揚陸艦。
「青い線がペネトの動き」
 つづいて、半島の付け根の山奥から緑の線がのびた。
 まっすぐ、ペネトを追いかける。
「緑の線が、パーフェクト朱墨」
 スゴいスピードだとわかる。
 日本海には、黄色い線が4本走ってる。
 黄色と緑の線が、からまった。
「ココで、航空自衛隊の足止めを食らう。
 スゴいね。
 1発も打たずに振り切った」
 たしかにそのとうり。
 黄色と緑の線は、どちらもすばやく、鋭い軌道を描く。
 けど、緑の線が勝った。
 これでアーリンくんは、反逆者になった。
 百万山の百万比咩神社で戦いをつかさどる、陰司宮。
 そのロボット部隊である、B小隊ホクシン・フォクシスの管理下から勝手に離れて、止めようとした戦闘機部隊を振り切ったからだ。
 ここへ来る途中、車で見た戦闘機部隊は、その時のだろう。
「さて、私たちと戦ったのはここですが」
 画面が、青と緑の線が合わさる所を拡大する。

 ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー

 けたたましいサイレン音!
 ビクッとなった!

『ポルタ警報。ポルタ警報。
 こちらは、ポルタ社航空管制室です――』

 けたたましい放送が、私たちの時間を引き裂いた。

『現在、ポルタ社本社上空に原因不明のポルタが発生しています。
 何が出てくるか、または吸い込まれるかわかりません。
 至急、建物などの丈夫な場所に隠れてください!』

 う~ん。と達美さんがうなった。
「さっき朱墨ちゃんを呼びだした時、大量のMCOを使ったでしょ」
 あまり、深刻そうな感じはない。
「MCOが派手に使われると、まだ暗号世界をさまよってるMCOを持つナニモノかがそれを感知して、この辺にやってくるの」
 そう言って、歩きだす。
 建物に隠れてくださいという放送に逆らって外へ、庭園コーナーへ行く。
「あんたたちも来なさい。店長も!」
 その姿に恐れはない。
「いいですけ、私もうさぎさんも異能力ありませんよ? 店長は知らないけど」
 朱墨ちゃんに言われて。
「僕にもありませんよ」
 でも、これからすることには関係ないみたい。
「こういうのは、ノリなの。共感が大事なの」
 庭園にでて、両手を空に大きく広げた。
「Welcome to 妖菓子鬼茶天 time!」

 赤い髪や肌が液体金属ボルケーニウムの形質をあらわす。
 その波にのって、機械式の骨格から、様々な機能が解放される。
 背中にはジェットエンジンと、鳥のような羽が。
 さらに2本の新しい腕が生える。
 全身は大ぶりな装甲で、服ごとおおわれる。
 顔は、あのかわいい顔が銀色のガイコツじみた機械を見せる。
 そこに、胴体からとびだしたヘルメットがおおう。
 すべての機械が定まると、ボルケーニウムが赤い表面塗料としておおう。
 左手で、ひたいに円錐形のツノを取り付ける。
 右手は獅子の口に鞘に入った脇差しをくわえさせる。
 場所限定とはいえ、レイドリフト・ドラゴンメイドの最強形態。
 凛々しい狩人である、姫獅子。
 その後ろを、私たちはついていった。
 私が感じてるのは……。
 その後ろ姿に安心感と、これから起こることへの好奇心?
 怖がりの私には、とてつもなく珍しいことだよ!

 空には星も月もなかった。
 それでもポルタ社の活動する光が、渦巻く黒い雲をうつしだしてる。
 自然の雲じゃないね。
 高さは200メートルほど?
 ビルや港の明かりでしっかり見えてる。
 その港のほうが、騒がしい。
 野太いエンジン音や、金属が擦れ合う音が重なる。
 ペネトを緊急発進させるのかな。
 たしかに、ミサイルや大砲が効く相手ならそれでいいね。
 でも、相手は申請のなくポルタを開けてくるんだよ。
 渦巻は加速を続けて、今は竜巻のよう。
 中心には白い光が。
 小さかったのが一気に眩いものになる!

「私の後で、同じように叫んでね」
 そう、一度ふりむいた。
 そして、口にくわえた刀を、引き抜いた。
「私たちは落下する何かを止めたい!」
 その短い刀を、天に向ける。
 光をまとって。
 その光は、私たちも包み込む。
 さっき、朱墨ちゃんが「まあ、ママみたいな神さま気分が味わえたのはよかったよ」といった意味が、少しわかった気がした。
「エニシング・キュア・キャプチャー!!」

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