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 それから数十年、ゴールディ王国は医療大国として近隣諸国に名を馳せていた。
 オピュウムの栽培も順調で、庶民にも手が出る価格で安定供給できるまでになっている。
 
 元ヌベール辺境伯のタウンハウスに住んでいた黒狼は、去年近衛騎士隊長の座を降り、愛妻レモンを連れてのんびりと物見遊山に興じていた。
 二人の間には三人の男児が誕生し、長子は近衛一番隊を任されるほどの強さだ。

 イーサンとジュライは、辺境伯として今日もオピュウム畑の管理に余念がない。
 近々長女が黒狼とレモンの長子と婚約することになっている。

 結局アルバートとシェリーの間に子供は生まれなかった。
 そのせいかいつまでも新婚当時のような甘い空気を漂わせ、今でも二人仲よく同じ執務室を使っている。
 シュラインの長男を養子に迎え、王太子としての教育も進んでいた。

 ブルーノは旧ミスティ侯爵邸で、さらなるオピュウムの有効活用を研究し、ひとりっ子である娘も研究者として父を良く手助けしていた。

 あれからすぐに即位した隣国の王キースは、ゴールディ王国との強い絆を保ち、最強の同盟国として発展していった。

 そしてサミュエル。
 彼は対外的には生涯独身を貫き、国王代理として王をよく支え、シェリーを伴って出席していた公的な行事でも、若い頃と変わらないモテっぷりだった。
 彼の最後を看取ったのは、アルバートの侍従として仕えていたオースティンだ。
 アルバートが即位してすぐに、侍従を辞めたオースティンは、サミュエルと秘密裏に結婚した。
 王宮にある教会で、ごく近しい身内だけで挙げた結婚式。
 司祭もいない式だったが、二人は幸せそうに近いのキスを交わしたという。
 その時のオースティンは、かつてのローズを彷彿とさせる美しさだったらしい。
 二人の仲を知るのはもちろんこの時出席した6人だけだ。
 国王と王妃、近衛騎士隊長とレモン夫人、宰相とその夫人。
 
 これは前王と前王妃の死を伴った、あの大事件と同じように、ゴールディ王家最大の秘密としてどこにも記録は残されていない。

 絶世の美男と称され、多くの女性の涙に見送られながら逝ったサミュエル。
 その傍らで号泣するオースティン。
 彼の死後、オースティンは王家の墓守として静かに暮らしている。
 ゴールディ王国で同性婚が承認されたのは、サミュエルの死から3年の後だった。
 




おしまい

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