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170 湖の村の若村長④/VSリート

 敵が潜伏する林……のほうではなく、草原方面、その先のほうへ。

 ……盗賊の残党ではない。それに、炎の能力者であることも、間違いない。いったい、何者だ。

 考えながら、ジャンは駆けた。

 おそらく相手は一人。他に気配はない。そして、目的は村を襲うこと……ではなく、おそらく、この自分自身。

 また、どこか、命を狙うというよりは、自分の力量を見極めようとしているようにも、ジャンには思えた。

 ――ボボボ……!
 ――ボボボボ……!

 草をつたい、2本の火線がジャンを追いかけてくる。

 ……能力者といえど、私が負けることはまずないだろう。とはいえ、少しでも有利に事を進めるべきだ。もうすぐ……

 かけ続けたジャンが、草原を抜けた。

 ――ボボボッ。

 追い続けていた2本の火線が、止まった。

 「ここまで来れば、火線は追いかけてこれないだろう」

 ジャンは、砂漠の上に立っていた。

 草原の先まで追いかけてきた2本の火線は、燃え移る媒体を失ってしまった。

 ――チリチリチリ……。

 その炎がだんだんと小さくなってきて、やがて、消えた。

 「!」

 草原の奥から、一人、ジャンのほうへと向かって歩いてきた。

 星の輝きに照らされ、その顔が映し出される。

 黒地に、赤々と揺らめく炎のような髪の毛、右耳に緑色に輝くピアスをつけ、背が低めの男。

 背中には、自らの背丈ほどの弓と、矢束が背負われている。

 そして、腰巻きの隠しに両手を突っ込んで、ひょうひょうとした様子で、ジャンを見つめている。

 「まさか、あなただったとは」
 ジャンは、落ち着いた様子で、言った。

 「キャラバンの村の、リートさん」
 「うぃ~っす」

 リートは言うと、親しみを込めた様子で微笑んだ。赤い目が、どこか楽しそうな表情を伺わせる。

 「どうして、このようなことをなさるのです?それに、どこでその能力を身に付けたのですか?」
 「そうっすね~。後者の問いに関しては、まあ、いろいろあったんすよ昔って、ことで」

 ジャンの問いに、リートは適当な表情と口調で答えた。

 「それで、前者のほうなんすけど~」

 リートは、腰巻きの隠しから、一枚の紙を取り出した。

 「ウームー地方って、知ってます?」
 「……」

 無言のジャンに構わず、リートは続けた。

 「これ、その地方で仕入れた書簡を書き写したものなんすけど、ジンの種類が書かれるんすよね」
 「……」
 「まあ、ジャンなんて、名前的にはありふれたものだし、ちょっと暇潰し程度につけてみただけだったんすけど……でも、さっき盗賊団との戦い見せてもらって、そんで、僕の火矢を素手で思いっきり受け止めてたのを見て、確信したんすよ」
 「何をです?」
 「まだしらを切るつもりっすか?ジン=ジャン」

 ――ボォォオオオ!!

 リートの周りを包み込むように、赤々と炎が沸き起こった。

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