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 シュラインが声を出す。

「我が母親である側妃はすでにいない。アルバートの母親である王妃は、ミスティ侯爵の別荘で軟禁状態だ。皇太子印と皇太子妃印は国王の手元にある。まあどちらもダミーだけど。にもかかわらず、皇太子と皇太子妃の名において悪政を進め、グリーナ国への宣戦布告の準備が進んでいるんだ」

「国家転覆罪ですわ」

 シェリーが口に出した。

「うん、このままではアルバートとシェリーが罪を被ることになる。そして次期国王は王弟であるサミュエル叔父だ。サミュエル叔父は剣は強いが政治には疎い。そこを補うのが私という絵だね」

 一度シュラインはワインを口に含んだ。

「叔父上と僕は父王の言いなりになると誤解させている。これはずっと努力をしてきた結果なんだけどね。実は私と叔父上は父を幽閉するためにかなり前から動いていたんだ。弟は国王になるんだから手を汚させない方がいいと思ってね。でも今回の件でアルバートが捨て身の作戦を決行してしまった。情報共有ができていなかったから焦ったよ」

 アルバートが口角を上げた。

「僕は叔父上と兄上は国王の手先だと思ってましたからね」

 二人はフッと笑った。

「お互い様だ。お前こそ兄上の言いなりだと思っていたんだ」

「でも、お互いに目的は同じでしたね」

「ああ、そういうことだ」

 三人は頷きあった。
 シェリーが改めて確認するように口を開いた。

「国王陛下の目的は?」

 アルバートが静かに言う。

「グリーナ王国を自分の愛した女の子供の手に渡すこと。そしてバローナ王国を併吞し三国を束ねて帝国化し、自らが初代皇帝となる」

「はぁぁぁぁ」

 シェリーは心からの溜息を吐いた。
 
「サミュエル様がゴールディの国王になって、アルバート殿下は?」

「うん、多分僕がバローナの国王だろうね。バローナは国を挙げてオピュウムの栽培をするという計画なんじゃないかな。君を僕の妃にしたということはそういうことだ」

「なるほど。私って人質なんですのね? それで? 皆さんの目指すところは?」

 キースが答える。

「私はグリーナ王国を国家として安定させることです。今の王妃では不正と賄賂が横行する低俗な国になってしまいます」

「それは結果的には国王が目指している着地点と同じでは?」

「全く違いますよ。属国になる気はありませんからね」

 シェリーが頷いた。
 アルバートが続ける。

「ゴールディ王国は現国王を更迭する。オピュウムは純然たる医薬品として扱うべきだ。扱い方さえ間違えなければ我が国の主力商品となる。しかしバローナは今のままでは崩壊するだろうね……」

「ロナードは自分が王になる気満々みたいだぜ?」

 シュラインが皮肉っぽい声を出した。

「させるか!」

 アルバートが声を荒げた。
 シェリーがアルバートを宥めながら言った。

「一旦はゴールディが後見となり、王家の立て直しに尽力しつつというところでしょうか」

「そうだね。それが正しい道だ」

 サミュエルが何度も頷きながらシェリーの言葉に賛成した。
 レモンが小さく手を上げながら発言する。

「これからどう動きますか?」

 キースが口を開いた。

「兄上はすでに廃人と化しているし、父王も同様だ。王妃はちょっとしたスキャンダルで失脚して幽閉という道を歩んでもらいましょう。準備は整っていますが、こちらと足並みをそろえて実行しないといけません」

 アルバートが何度も頷いた。

「当面は元婚約者を連れ歩いて妻を蔑ろにしているバカ皇太子を続けるよ。ローズが死んだときにミスティ侯爵の堪忍袋の緒が切れた。全面的に協力してくれる。ロナードは消えてもらうさ。こちらは早急にね」

 サミュエルがレモンの顔を見なが言う。

「女嫌いの私がレモン嬢に夢中になっていると兄に思わせなくてはいけない。レモン嬢は王妃になりたいと思っているという噂を撒いて、それを叶えようとしているってね」

「では私はまだサミュエル殿下のお近くに居られますの?」

「そうだね。私では不服だろうが我慢して欲しい」

 レモンがブンブンと顔を横に振って真っ赤な顔をした。
 ずっと黙っていたレモンの兄オースティンが口を開く。

「誤解するなよ。お前はアルバート殿下の影武者みたいなものだ。それにサミュエル殿下とお前じゃあ月とすっぽん、提灯と釣鐘、宮廷料理と屋台の串焼きほどの差がある」

 レモンが頬を膨らせた。
 さすがにサミュエルが慌てる。

「オースティン、言い過ぎだ」

「いえ、悔しいですが納得です。見た目も身分も剣技も殿下の足元にも及びませんから」

「レモン嬢……私はあなたをとても可愛らしい人だと思っているよ」

 サミュエルの言葉に、レモンの顔が赤を通り越して紫になってしまった。

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