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天才剛毛ロリ童女を添えて~リリィ登場!





 ――ざわざわと話し声が聞こえる。

「ピー、ピー! 下がって! ほら下がって! 危ないですから、下がってください!!」
「はなっ、離せ! 私はなにも知らん! この船はたまたまココに墜落しただけで!! おい、話を聞け! 私は魔物の手先じゃない!!!!」
「ひゃああ、こりゃあ派手にやられたねー」
「ひゃああ、じゃねーよ、さっさと調べろ、んでさっさと上がるぞ」

 いってぇえ、なんだ…ああ、そうだった、船が街に落ちて、んで俺は生きてる。体も全身痛いが動かせる…よな?
 暗闇の中、俺は自分にかぶさっているそれを押し込み退かすと、その隙間からまばゆい光が俺の眼を差す。大勢の人々、何処を見てもニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン、どうやらこの船を見に来た野次馬のようだ、そして、青い制服に身を包んだ奴らが必死にその興味津々そうに眺める野次馬を押さえつけている、この街の司法機関っつーところか? 良くは分かんねーが、そして、何といってもその野次馬の目と鼻の先、そこには見覚えのある非常識な乳を振り乱しながら叫んでいる、騎士が…。

「話を聞けええええ! 私はやってない、被害者なんだ! この船を落としたのもこの街の結界を破ったのもある魔物が原因で!!」

 おい、もしかしなくても俺のことだよな、人が寝てるときに好き勝手言いやがって。
 そんなことを考えていると一人の女性の悲鳴が響く、俺はその女性を反射的に見るが、対照的に女性は俺のことを指を差し。

「あっ、あれ見て! 魔物よ!! 魔物がいるわ!!!!」

 その場にいた全員が、瓦礫から出てきていた俺を見る。
 おっと、もしかしなくても魔物は歓迎されてない感じか。

「ピー!! 捕らえろおおおおおおおおおおお!!!!」


 ◇ ◇ ◇


 はあ、何故こんなことになるのか、俺は太い鉄格子と十二畳程の無機質な部屋で頭を抱えながら溜息をついた。

「ちょっ、キミ達、やめっ、止めないか」
「なあ、どうするんだ? こんな所に閉じ込められて、正直、弁明の余地などまったくもってないぞ? このまま処刑行きになるかもしれん」
「あー、分かってるよ、けど何も思いつかねー、正直ツミだ」
「いや、ホントに、何なんだねキミ達ッちょおおおお! どっどこ触っている!」
「おい、変なところには触るなよ、これでもレディなのだからな」
「いやそうだな、コイツが暴れるからつい」
「いやキミもだよ!? というか<これでも>とはどういうことだね、私は立派なレディだ!! なっ、何故撫でる! さっきからベタベタベタベタと! や、やめろ、ヤメロッ!!!!」

 俺たちの間に挟まれ、騒がしくプンスカ怒るそいつは、突然いきり立ち、勢いよく立ち上がるとその小さな体で目いっぱいに胸を張り、どこかの貴族のように、優雅に胸に手を添え、乳山に編み込まれたごわごわな金髪を振り乱しながら、座り見上げる俺たちに声高らかに名乗りを上げる。

「私はリリィ。リリ・リマキナ! この魔導国家<バグライト>の中枢、キラベルに通う将来有望、新進気鋭、傾国美人…の天才魔術師様だぞ! うやまえ!」
「「はあ…」」

 そんな、チンチクリンが俺たちの前には立っていた。

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