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第165話 強さの証明

『モンドルの夜明け』のアジトにお呼ばれした俺は、そこで自分の力を証明するために、メンバーの一人である、ドエルという男と一対一の勝負をすることになった。

 アジトから外に移動した俺たちを見守るのは、他の『モンドルの夜明け』のメンバー。

 ワイバーンを倒したという俺の実力を見たいのか、それと戦うドエルの有志を見たいのか。

 はたまた、見知らぬ冒険者がやられるところ見たいのか。

「アイクさん! ドエルは今回の作戦に必要な人材です! 失礼な態度を取ったのは謝罪するので、どうか命だけは!」

「ドエルさん、逃げて! じゃないと……ドエルさーん!!」

 各々がどんな気持ちで見守っているのか分からないが、モルンとノアンが何を考えているのかは分かった。

 ……いや、さすがに殺したりしないって。

 どうやら、ワイバーンを倒したときに見せた倒し方が良くないみたいだった。

 色々と誤解されてしまっている。

「すまないな。別に、モルンさんの言葉を疑っているわけじゃないんだ。ただ、力を知っておかないと、作戦も立てられないんだよ」

 少し申し訳なさそうな顔をしながらも、斧を担いだドエルの顔には、どこか余裕があるように見えた。

 モルンのことは信じているけど、お前のことは信じていないぞという意味だろうか?

 まぁ、そうじゃなければ、ここまで余裕の表情はしないだろう。

「分かってますよ。それは俺も同感ですから」

 俺がそういうと、ドエルはその表情を保ったまま笑みを浮かべていた。

 それから、ドエルは斧を両手で持ち軽く構えた。どうやら、すぐにでも始めるつもりらしい。

 さて、問題はどうやって倒すかだ。

 いや、ただの倒し方について悩んでいるのではない。どうやって、威厳を示しつつ軽症で片付けられるかについて、悩んでいるんだ。

 肉体的に軽症で済ませるのなら、【精神支配】で一気に倒してもいいが、それだとドエルがいつ目覚めるかが分からない。

 それに、【精神支配】で倒して、他のメンバーから危険分子扱いされるのも困る。

【肉体支配】を使うのもいいが、一対一で使っても地味だしなぁ。

 とりあえず、【感情吸収】と【肉体強化】だけでも使っておくか。

「構えないのか?」

「いつ来てもいいですよ」

「……短剣は抜かないのか?」

「抜かせてくださいよ」

 俺が軽く挑発すると、ドエルは不敵な笑みを浮かべたと同時に、その斧をこちらに振り下ろしてきた。

 俺は二つのスキルを発動させて、体を軽くひねってその攻撃をかわした。

 そのまま地面に突き刺さった斧は、地面に大きなヒビを入れて、俺の足元を軽くえぐり取った。

 何かのスキルか?

 地面を破壊するほどの一撃には見えなかったので、俺はその異様な光景に微かに目を見開いていた。

 いや、ただ驚いているだけじゃまずいよな。

俺は軽度で済むということで、【近接格闘】のスキルを発動させた。

 そして、俺は攻撃をかわしたままドエルの胸元に手を置いた。そのまま、足を絡めて軽く重心を崩させて、一気に胸に置いている手を押し込んだ。

「ぐおっ!」

 大きな体が一瞬、宙に浮いた。

そして、ただ押し倒すだけでは地味だろうと思って、少し力を入れて地面に叩きつけると、その衝撃で地面が割れた。

 ドエルが斧で地面を割った衝撃の数倍の衝撃が地面を揺らした。そして、それを生身で受けたドエルはというとーー

「ぐわぁああああああ!!!」

 胸元で何かが折れる鈍い音と共に、鈍い悲鳴に近い声を上げていた。

 ん? 何かが折れる音?

「やばいっ、やりすぎたっ……『ハイヒーリング』!」

 まずいっ、こんな簡単に骨が折れると思わなかった。

 俺は急いでその骨が折れた所に、回復魔法を唱えて治療に取り掛かった。多分、この程度の怪我ならひどくはならないはず。

「ええ? ドエルがあっさり負けた?」「お、おい、なんか回復魔法かけだしたぞ」「な、治した後にまたボコる気だ……」

 なんか出会ってから時間が余り立っていないのに、誤解をされている気がする。

ひどい印象を受けていそうだったので、俺は取り繕ったような笑みを他のメンバーに向けた。

 そして、少しでも誤解を解こうとしたのだがーー

「ひぃっ!!」

 なぜか、笑顔であることが逆効果になっていそうだった。

 な、なぜだ。そこまで引くか普通。

「えっと、他に俺とやり合いたい人いますか?」

 俺の問いかけに対して、息でも合わせたように顔を横にブンブンと激しく振っている他のメンバーたち。

 戦いたくないというよりも、戦いこと自体を拒絶しているような反応だった。

「アイクさん、スキル解除し忘れてますよ!」

「あっ」

 リリの言葉を受けて、俺は急いで【感情吸収】のスキルを解除した。

そして、再び他のメンバーに視線を向けたのだが、その顔は張りつめたようなままだった。

 ……いちおう、威厳は示せたのかな?

 こうして、俺の実力は無事に? 『モンドルの夜明け』のメンバーに認められることになったのだった。

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