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第128話 盗賊団との交戦?

「ここから、馬車で3日ほど走ったところに隠れ別荘があります」

 ミノラルからイリスが乗ってきた馬車に乗って、俺たちは隠し別荘に向かっていた。

その馬車での移動中。今後の流れについて、俺たちはハンスから説明を受けていた。

 車内には俺とリリとポチ。それに向かい合う形で、ハンスとイリスが腰を下ろしていた。

 乗り込んだ馬車自体は、特に王家を象徴するような装飾もなく、綺麗で頑丈な造りをしているものだった。

少しの荷物が乗っている今の状態でも、大人があと五人は座れるであろう広さの馬車は一般人が乗るにしては豪華すぎる。

ちょっとした貴族が持つようなその馬車は、王族が使う中では一番地味な方なのかもしれないが一般的には少し目立ってしまう。

……あまり良い予感はしないが、何か飾りをつけていないだけでも、狙われるリスクは少ないか。

「我々の前に一台、後ろに一台の陣形で騎士団の手練れが乗った馬車を走らせています。これ以上多くすると、逆に狙われるリスクを上げてしまうので」

「そうですね。護衛をたくさんつければ、嫌でも目立ちますからね」

 欲を言えば、俺たち一台の馬車だけでも良かったのだが、さすがに王女を俺たちだけに任せるわけにはいかないのだろう。

 これでもかなり配慮してくれていると考えた方がいい。

「まぁ、それでも狙われますよね」

「ええ。なので、別荘に着くまでは襲い掛かってくる盗賊たちの相手をしていただきたいのです。もちろん、エリスさ……イリスの安全を第一にお願いします」

「分かりました」

 元々王都に向かう馬車よりも、王都から出ていく馬車の方が狙われやすい。理由は単純で、王都で商売をしてきた帰りの馬車を襲いたいからだ。

 盗賊たちも金目の物よりも金の方が欲しいだろうからな。

 そう考えると、ミノラルから少し離れた今が一番狙われやすいだろう。丁度憲兵団が気づかないくらい離れたしな。

 そろそろ辺りを警戒して進んだ方がいいだろうと思って、【気配感知】のスキルを使用した瞬間、こちらに向かってくる気配があることに気がついた。

「……二台馬車が近づいてきてますね。これは、結構速いな」

「馬車が近づいてる? どちらからですか?」

「右の方から来ますね。そろそろ、目視でも見えますかね?」

 ハンスは微かに目を見開いたあと、乗っている馬車の窓から俺が指さした方角を静かに覗いていた。

「あれは……まっすぐにこちらに突っ込んで来てますな。脇目も振らずに」

「盗賊団ということでいいんですかね?」

「我々に危害を与えようとしてるのは明確ですな。馬車を引いている魔物が普通ではないですね」

 馬車で走っている速度に追いつくほどの速さで突っ込んでくるもの。当然、それを引くものも普通ではない。

 ハンスに倣って俺も窓の外を見てみると、鱗を纏った大きな鳥型の魔物が血走った様子でこちらに突っ込んで来ていた。その後ろにある馬車を引きずるようにして引いている。

 見るからに普通じゃない。非道徳的な行為で無理やり速度を上げられているように見える。
 
 それが薬物投与なのか、何かしらのアイテムなのかは分からないが。

 その少し後ろには少しだけ速度を落とした馬車が一台続いていた。

 もしかして、あの先頭を走る馬車は、俺らに衝突させるためだけだったりしないよな?

 ……しないよな?

「すぐに陣形を整えて反撃します。まずは、この馬車を守ることを第一に陣形を組んだあと、相手の馬車を止めないてから、盗賊たちを引きずり出します」

「あの勢いの馬車をですか」

 悠長に構えてられない距離まで近づいてきた馬車は、やはりそのまま俺たちの馬車に衝突することが目的みたいだった。

 速度を落とす素振りを見せないということは、そういうことなのだろう。

 多分、俺たちが乗っている馬車以外の馬車がになって、あの馬車を止めるのだと思う。しかし、あのスピードで突っ込まれたら、ぶつけられた馬車もただでは済まないだろう。

 それなら、俺たちで解決をした方がよさそうだな。

「きゃんっ!」

「ポチ? どうした?」

 俺が【道化師】のスキルを発動させようとしていると、ポチが吠えて俺の足元にやってきた。

 何かを伝えようとしている顔と今の状況から、ポチの言いたいことが何となく伝わってきた。

「あの馬車を止められるのか?」

「きゃんっ」

「あの馬車をですか?」

「きゃんきゃんっ」

 ハンスはポチがそんなことをできるようには思えないのか、突然の申し出に開いた口が塞がらなくなっていた。

 なぁ、見るからに小型犬のポチ姿を見れば、そんな反応にもなるか。

 それでも、俺とリリからすれば、ポチは俺たちのパーティのメンバーの一人。馬車を荷台止めるくらいポチにとって造作もないということは、すぐに理解できた。

「それじゃあ、お願いできるか、ポチ」

「きゃんっ!」

「だ、大丈夫なのですか?」

「大丈夫ですよ。ああ見えて、ポチは力自慢なんです」

 ポチの姿と力自慢というワードがかけ離れていると思ったんだろう。ハンスは俺が言っている言葉の意味が分からないような顔をしていた。

 ポチは俺にお願いされたのが嬉しかったのか、尻尾をぶんぶんと振った後に大きな声で返事をすると、少し俺から離れて向かってくる馬車の方角に体を向けた。
 
そして、足を踏ん張るように力を入れた後、可愛らしい姿のまま遠吠えを一つした。

「わおおーーん!」

 その瞬間、窓の外にいた馬車が視界の外に消えた。

「「え?」」

 その代わりに現れたのは太い氷柱。

 それが地面からいきなり現れて、そのまま二台の馬車を貫いた。そして、貫かれた馬車はそのまま数メートル上空で氷柱にぶら下がっていた。

 当然、タイヤが地面から離れてしまえば馬車は近づくことができない。

「……止まりはしましたね、ハンスさん」

「……そうですね。止まりはしましたね」

 あまりにも暴力的過ぎる急停止。その衝撃を受けたせいか、気が狂ったような魔物は意識を失ってしまったのか、上空でぐったりとしていた。

「きゃんっ」

 それでも、被害はゼロの状態で盗賊を撃退することに成功したのだった。

 褒めて欲しそうにこちらを向いて尻尾を振っているポチを褒めてあげえるべきだろう。

「た、助けてくれ~!」

 俺は上空で助けを呼ぶ盗賊団を見上げながら、気持ち良さそうに頭を撫でられているポチの甘える鳴き声を聞いて少しだけ癒されていたのだった。


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