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22.リーダー! 真脇 達美!

 私はベンチにすわらされた。
 逆らうつもりもないけど、逆らえない。
 相手は180キロある金属ボディーだから。
「うさぎ、『何が忘れられたのか』よかったよ」
 並ぶ達美さんが微笑んだ。
 血の繋がりはない、そもそも種族も違うけど。
 達美さんは、ボルケーナ先輩の旦那さんの妹さん。
 そのお兄さんの手で脳に併設された量子コンピュータが、ネットワーク上のあらゆる情報にアクセスできる。
 その達美さんに言われたなら、ちゃんと見たんだろう。
「でも、今日はチューもなしですか?」
 思いっきり顔をよせてみる。
 いつもなら抱きつかれてホッペにチューぐらいするのに。
 私のアイドルは遠ざかった。
 微笑みに寂しさをにじませて。
 達美さんのしっぽがバタバタ降れている。
 不機嫌なネコの特性が。
 フカフカモフモフの赤い毛でおおわれたしっぽ。
 そのなかにも重く固いフレームがある。
 当たるといたい。

 私は背筋をのばして、礼を返す。
「ありがとうございます」
 だけど、ここでほめられたくなかったな。
 この仕事についてイヤなこと。
 それは自分の経験が、イヤな記憶のイメージで上書きされていくことだよ。
「あんまりよかったから、今アーリンくんに見てもらってる」
 たとえ誰に見てもらっても、この日を思いだすんだろう。
 私を無視して、それにファントム・ショットゲーマー九尾 朱墨の監督も無視して、勝手に飛びだしてつかまったアーリンくんを尋問する今日を・・・・・・アレ?
「なんで勝手に見せてるんですか」
 何となく予想はつくけど。
「うちの店のデジタル緞帳、アレってシャイニー☆シャウツがなにか更新するとお知らせがでるでしょ。
 それに興味をもった」
 やっぱりだよ。
 だけどムカついた。
「こっちの世界を知ってもらうよい教材だと思ってね。
 もともと、そのつもりだったでしょ」
「そうですけど、総理大臣がオカルトな謎をそのままにする話しなんて、あの・・・・・・マズイことになりませんか?」
 達美さんの表情に、活気が戻ってきた。
「人の苦境をバカにする奴なら、このまま切っても問題ないと思うよ」
 その誘惑には、引かれるものがあるけど。
「引かれる必要はないみたいだよ。
 本人は、君と朱墨ちゃんたちのためにやりたかったことみたい」
 私たちのため?
 あのロボルケーナで何を……私たちに力を示したかったとか?
「たぶんね。
 でもそれは教えてくれなかった」
 そうですか、そう言えば。
「そもそもあれ、15分の動画です。
 行かないとマズイんじゃ?」
 腰を浮かしかける。
 でも。
「私の店でパティシエがいないことなどありません。
 それに、タケくんが細かい説明をしてる頃だと思うよ」
 全自動こん棒つなぎマシンを、食い入るように見ていたアーリンくん。
 その姿は、本当にメカが好きと言うパワーがあった。
 タケくんとは、鷲矢 武志さん。
 達美さんの彼氏で、ピアニスト。
 そして、達美さんとほぼ同じ型のサイボーグ。
「それなら、時間は問題ないですね。
 今日の戦闘については、車のなかでだいたい見ました。
 他に覚えておくことは?」
「あるよ。今夜の妖菓子鬼茶天タイムは、アーリンくんにやってもらうから」
 妖菓子鬼茶天タイム。
 あやかしきっさてんたいむ。
 ここ、グロリオススメで使うことができる、達美さんの最強形態。
 ボルケーナ先輩が認めた神の力を、依頼人の願いの力を糧に使うことができる。
 ただし、店のなか限定で。
 依頼人は、「丸い角砂糖ください」と言えば・・・・・・アレ?
「じゃあ、私の依頼は?」
「アーリンくんの依頼と同じだった。
 あんたが店に入ったら、実行するよ」
 そういって立ち上がった。
 ・・・・・・朱墨ちゃんに会いたかった?
 ロボルケーナのことで、なにか話があるのかしら。
 私も立ちあがり、エスカレーターで上に向かう。
「そうそう、あのロボルケーナ、パーフェクト朱墨って言うんだって」
 へぇ~~。ええ~~?!

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