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4話 盗聴する霊

 結心は、次の依頼主の家に入った。入った感想としては、ごく一般的な空気で、依頼主も、可愛いらしい、ややぽっちゃりした明るい女子大生という感じだったので、この人に憑いている霊なんているのかなって首を傾げながら、1ルームの中にある小さなテーブルの椅子に座った。

「聞いて。いつも、夜道で誰かの気配がして、振り返っても誰もいないの。そして、この部屋で、親に、今度、友達と伊豆に旅行に行くって話したら、決まって、次の日には学校で話しが広がっているの。それって、私に幽霊が憑いていて、夜道で私に着いてきたり、この部屋で話したこと聞いて、学校の友達に吹き込んでいるんじゃないかと思って。」
「そんなこと、するかな。なんか、そのようなことされて当然という事件とか、気になることはあるんですか?」
「あるって言えば、ある。去年、仲良くしていた男女8人グループの男性陣が、格安バス旅行に行ったんだけど、その途中でバスが横転して、そのうちの1人が亡くなっちゃったの。多分、その人が、寂しくて私に取り憑いているんじゃないかって。」
「では調べてみますね。今は、この部屋には何もいませんよ。」
「そうか。じゃあ、お願いね。」

 まず、彼女が夜道を歩いている後ろを着いて行ってみることにした。
「なんか、霊の影も見えないな。部屋にも見当たらないし、夜道にもいない。どういうこと? もしかしたら、あれじゃない。」

 次の日、結心は彼女の部屋に言って、何か装置を取り出し、ぐるっと回ってみた。
「これって、ゴーストバスターみたいなやつ。面白い。」
「ちょっと、黙っていて。」
 と言うと、結心は、その機械がビービーという方向に近寄っていき、電源ケーブルをコンセントから抜き、解体した。そうすると、盗聴器ができてたので、抜くと、そのランプが消えた。
「この他にはなさそうね。」
「この機械と、今、見つけたものはなんなの?」
「これは盗聴器の電波を探す機械で、秋葉原とかでも売っているやつよ。そして、これは盗聴器。」
「え、盗聴器、なんで? 私は除霊してもらいたいってお願いしたのよ。」
「どうも霊の仕業じゃないと思って。実際に、盗聴器があった。霊は盗聴器とかつけないの。もう外したから、話しても伝わらない。それで、次は、今日、あなたが夜道を歩いている後をつけて、ストーカーを捕まえてやる。」
「え、人間のストーカーの仕業っていうこと?」

 その晩、依頼主に夜道を歩いてもらうと、案の上、マスクをして、深々と帽子を被った男が後ろをつけていた。
「あなた、何をしているの?」
「え、なんのこと?」
「あの人のストーカーをするのは、もうやめて。これ以上、何かすると警察を呼ぶわよ。」
「なんだ、バレちゃったか。でも、女のお前に何ができるかな?」

 そう言って、男は結心にナイフで襲いかかってきた。結心は、ピーと笛を鳴らすと、2人の警察官が助けにきて、男を取り押さえた。
「傷害未遂の現行犯で逮捕する。言い分があれば、警察署で聞くから、こい。」
「あの女が悪いんだ。俺のこと好きだっていうから、可哀想で付き合うと言ったら、なんか俺のこと避けてきて。全くわからないやつだから、少し、いじめてやろうと思って。」
「いいから、パトカーに乗って。」

 男性は、頭を垂れ、警官に連行されて行った。
「ほら、ストーカーだったでしょ。みたことある人?」
「大学の同じクラスの人。彼、話したことなかったのに、急に、告白とかしてきて、でもタイプじゃなかったから断って、それっきりと思っていたのに。」
「一番怖いのは人間だってことね。では、報酬をもらうわ。」
「報酬って、霊じゃなかったんだから半額とかにできない?」
「できない。むしろ、男性がナイフで襲われたんだから、すごく危険だったわ。ということで、値切らないで20万円をお支払いください。」
「仕方がないな。お父さんにお願いしてもらったお金、20万円全額払うわ。」
「ありがとう。お父さん、あなたを可愛がっていてよかったですね。そうじゃないと、ストーカーが部屋に入ってきて、あなたを襲っていたかもよ。少なくても、盗聴器を仕掛けに、あなたの部屋に入ったんだろうし。」
「そうだ。怖い。部屋に入ったんだ。これから気をつけないと。では、おやすみなさい。」

 今回は霊じゃなかったけど、結果として、女性にとりつくものを払ったことには違いない。そんなことを考えながら、明るい気持ちで結心は、家へと電車に乗った。

 でも、最近、結心が電車に乗っていると、いろいろな人に、いろいろな霊が憑いているなと気づくようになっていた。前にいる女性には、この女性が略奪愛をしたせいで、彼との関係を潰され、それを苦にして自殺した女性。すごく睨んでる。なんか心臓を手で強く掴んで、潰しそうだから、心臓病でこの人死んじゃうかもね。横にいる男性には、銀行の審査でNGにした結果、倒産し、首吊り自殺をしたおじさんの霊が憑いてる。今度の海の旅行で、お前とその家族を海で溺れさせて殺すぞと、大声で叫んでる。
 いずれも、今生きている、この女性とか男性とかが悪いんだろうけど、死んじゃったんだから、これまでのことを忘れて、心穏やかに過ごす方がいいじゃないと思い、席で、目をつぶり、寝たふりをすることにした結心だった。

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