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44 アクス王国へ

 ――ザッ、ザッ……。

 砂の踏みしめる音だけが、聞こえる。

 砂漠を歩く皆の顔に、ただならぬ緊張感が漂っていた。

 「……」
 「……」

 誰も、言葉を発することはない。そして、周囲に目をやりながら、細心の注意を払っている。

 いつどこで、ジンが出てくるか分からない。

 そんな緊張感のまま、歩き続けた。

 段々と、緑が増えてきた。

 砂漠から、草原へと、変わってゆく。

 ……キャラバンの村みたいだな。

 警戒しつつ、周りの木々や、草原に目をやりながら、マナトは思った。

 ……ジン、か。

 人間ならざる者であり、塵で出来ていて血液を持たない。そして、人間に危害を加える。

 ちなみにジンの襲う人間において、どうやら善悪は問わないようだ。

 すでにドレイク、グリズリー、人魚と、ファンタジックな生物達を嫌というほどこの世界で見せつけられている以上、ジンの存在も今では自然といるものだと思うことはできた。

 マナトはふと、隣に並行して歩くラクダを見た。

 ……落ち着くなぁ。君達は、前の世界でもいたよ。

 更に一行は歩き続けた。

 やがて、大きな木の門が、姿を現した。

 「よし!みんな、到着だ!」
 ケントが嬉しそうに言った。

 「ぷはぁ!」

 ラクトが、まるでさっきまで息を止めていたように、一気に息を吐いた。

 「ふぅ〜」

 ミトも、安堵のため息をついた。

 ウテナとルナも、疲れがどっと出ている感じだ。

 ずっと、緊張感を保って歩いてきたが、結局、何もなかった。

 西のサライから、アクス王国まで、さほど距離はなかった。が、気疲れで、今までの移動で一番しんどかったと、皆感じている様子だった。

 「キャラバンか!名は?」
 門番が、門の上から声をかけてきた。

 「ケント商隊だ」
 「分かった。ちょっと待ってろ」

 門番は姿を消した。

 しばらく待っていると、

 ――ギィィィ。

 門が開いた。

 門の先に続く道の脇には、王国の護衛だろう、銀色の甲冑を装備した者達が綺麗に整列している。

 「ケント!」

 護衛の中から一人の男が出てきて、ケントに話しかけた。

 「おう!護衛団長、久しぶりだな」

 護衛団長に招かれ、皆、門の中に入った。

 「おぉ……」

 高く長い、天に向かって垂直にそびえ立つ石柱がまず目に入って来た。

 そして、護衛の先には、緑豊かな風景に、石造建築の大小様々な建物。

 道を行き交う多くの人達。視界に入ってくるだけで、キャラバンの村の倍はいる印象だ。

 アクス王国に、マナト達はやって来た。

 「おっと、ケント……」

 門に入るとすぐ、護衛団長が一行を止めた。

 「すまないが、血を見せてもらいたいんだ」

 ケントだけでなく、皆を見渡しながら、護衛団長は言った。

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