382章 仕事の依頼
ミサキの家に、20くらいの女性がやってきた。
「ミサキさん、はじめまして。私はドリスといいます」
「ドリスさん、はじめまして・・・・・・」
ホノカはお手伝いとして、お茶を持ってきた。
「お茶になります・・・・・・」
「ありがとうございます。いただきます」
ドリスは小さく深呼吸をする。
「ミサキさんに仕事の依頼があります」
「どんなことをするのでしょうか?」
穏やかな仕事であってほしい。ミサキはそのように願った。
「マネスクという場所で、ラーメンの大食いをやってほしいです」
「マネスクは遠くないですか?」
「車で片道6時間といったところでしょうか。ここからは離れた場所になります」
片道6時間を一人で行くのは、大いに不安がある。食事などをカバーしてくれる、つきそいは必須だ。
「一人は不安なので、つきそいをつけてもいいですか?」
「いいですよ。どなたがつきそいしますか?」
ホノカは自分から名乗り出た。
「私がついていきたいです」
ホノカは目線で、ついていきたいとアピールしていた。
「束縛時間は長くなるけど、それでもかまわない?」
「ミサキちゃんのためになるなら、私は一生懸命頑張るよ」
「ホノカちゃん、ありがとう。拘束時間分はお金を払うね」
ドリスの視線は、ホノカに向けられた。
「ミサキさんのフォローをよろしくお願いします」
「わかりました。私なりに一生懸命フォローします」
一人で面倒を見るのは、大変な作業である。ミサキは人員を追加しようと思った。
「誰になるのかは決めていませんが、もう一人連れて行ってもいいですか。一人で面倒を見るのは、かなりの労力を要します」
「いいですよ。連れてきてください」
二人いることによって、交代で睡眠を取ることができる。長時間移動するためには、睡眠は必要だ。
「ミサキさん、お仕事は2週間後です。日程などを開けておいてくださいね」
「わかりました。日程の都合をつけるようにします」
「ミサキさん、よろしくお願いします」
ミサキのおなかはギュルルとなる。ドリスは人が変わったかのように、瞳を輝かせていた。
「ミサキさんの大食いを、生で見てみたいです。あまりに豪快な食べっぷりは、人の心を癒すといわれています」
人の心を癒す食べっぷりか。ミサキは一ミリも想像できなかった。
話をしている間にも、空腹は加速していく。ミサキは立ち上がると、自販機に向かった。
「ミサキさん、何を食べるんですか?」
「ラーメン10人前、うどん10人前、ざるソバ10人前です」
ソバはすぐに伸びる性質を持つ。温かい状態で、10人前を食べるのは適さない。
「すごいですね。私には絶対に食べられません」
ミサキはラーメン10人前を、6分で食べきった。
「噂には聞いていたけど、すさまじい胃袋ですね」
ドリスは興味本位なのか、おなかに視線を向けていた。
「ちょっとくらいなら、おなかに触っていいですよ。胸、○○に触った場合は、すぐに警察に通報しますので、絶対にやめてくださいね」
胸、○○は不可侵領域。心を許した人以外には、絶対に触れられたくない個所である。
「ミサキさん、失礼します」
ドリスの指は、へその中に潜り込む。ミサキは思わず、体をのけぞらせてしまった。
「おへその中もやめてください。あまりにくすぐったくて、体勢を維持できません」
ドリスの手は、おなかを上下する。
「あんなに食べているのに、すさまじく細いですね。脂肪についてもほとんどついていないように感じます」
直近の体脂肪率は12パーセント。アスリートよりは若干高いものの、低水準であるといえる。