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第3話 《銀の子との出会い》

互いに名前を贈り合った後。
ボクはこの大猫たちに末の妹として迎えられた。

それからの暮らしは、とても楽しいものになった。

夏が深まるにつれ、高く青く澄む大空を見上げる。
皆で狩りをした後、何となく見上げた空がとても広く見えた。

そのうち秋がやって来て。
森が色付く中、大猫族が得意とする草木を操る魔法を母猫(母さん)から教わった。
これを教わった事で、初めより手足の鎖を木々に引っ掛けて転ぶ事が少なくなった。
……それでもコケる時はコケるんだけど。

そして、冬がやって来た。

***

凍った湖でライラと滑って遊んだ帰り道。
ボクは森に満ちる魔力と違った気配を感じて立ち止まった。
「……何か、居る」
『…………この気配……何か、ゆらゆらしてる?あとこれは……血の匂い、かなぁ?』
「行ってみよう」
そう言ってボクはライラから降りた。

気配に近付くにつれて濃くなって行く匂い。
ざわめく森を足早に進んだ先、草木に隠れるように“それ”は居た。

「グルルルルル……」

あちらもボクたちに気付いたようで威嚇してきた。
ボク達は一瞬、視線を合わせる。
ライラは頷くと、不自然に草木が倒れている場所に向かって言った。
『ライラたちは敵じゃないよ!この森の大猫だから、様子を見に来ただけなの!!』
ギラリと青く、冷たく輝く2つの光がこちらを向いた。
『なら……何故、人間を連れてる?アレは……敵だ…………!』
低く唸るその声は──底知れぬ憎悪を滲ませていて。
『ペリカはライラの妹だよ!!人間だけど、ライラ達の家族だもん!』
『人間は!オレの家族は、彼奴らに追われて散り散りになった!!……もう、何人残っているかも分からない。母さんだって、もう……!』

「──人間が、ごめんなさい」

気づいた時には、ボクは彼の前に出ていた。
雲の晴れ間から月が覗き、満月の月明かりが森をぼんやりと照らす。
その光が照らし出したのは──槍で突かれ、剣で切られたような傷を受けている大きな獣。
傷ついても尚、月光で青白く輝くその毛並みは……本来はもっと北に住むはずの《銀狼族》のソレだった。

「ボクを殺したいなら、それでも良いよ」
『ペリカ!?』
銀狼の子は、ボクが魔獣の言葉を理解している事に驚いているらしい。
ボクは、駆け寄ろうとしたライラを手で制して続ける。
「……でもその怪我じゃ無理だよ。今は、怪我を治すのが先じゃないかな?」
『何だと!?』
「それに、もう話すのもやっとでしょう?」
図星だったらしく、彼は顔をしかめた。
「……ライラ、彼を癒やし(ヒールし)てあげて。ボクは母さんたちを呼んでくる」
それだけを言って、ボクは二人に背を向けた。
『オイ、何を勝手に……いっ!?』
『はいはい、やせ我慢はそこまでにしておとなしくするの!』
ライラは、無理矢理起き上がろうとした銀狼の子の頭を──地面に押し戻した。

……そんな二人を尻目に、ボクは駆け出した。

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