348章 3人目の懲戒免職
アズサは無断欠勤の常連で、懲戒免職処分となった。焼きそば店の懲戒免職は、アオイ、ツカサに続いて、3人目となる。
今回の懲戒免職について、前向きにとらえる。アズサは能力の低さゆえに、無駄に仕事を増やしていた。多忙な店において、誰かの手間を増やすのは致命的だ。誰かのカバーをするほどの余裕のある人は、誰一人としていない。言葉にはしないものの、能力不足の人にはやめてほしいと願っている。
アズサのピンチヒッターとして、ユタカがやってきた。てきぱきと動くため、仕事に対する安心感は抜群だ。
ユタカは焼きそばを持ってくる。ソースの香ばしいにおいは、食欲をおおいに刺激する。
「焼きそば、お待たせしました」
「ありがとう。とってもおいしそうだね」
ユタカは照れ隠しをする。傍目から見ていると、とってもかわいい。
マスカラをした若い女性は、こちらに声をかけてきた。
「ミサキちゃん、焼きそばを食べたいの?」
「いいえ、そういうわけでは・・・・・・」
ミサキのおなかギュルルとなる。勤務中にとりかえしのつかない、失態を犯してしまった。
おなかの音を聞きつけた客たちは、待っていましたといわんばかりに、たくさんの注文を入れる。
「ミサキちゃんに、焼きそば10人前」
「ミサキちゃんに、焼きそば8人前」
「ミサキちゃんに、焼きそば7人前」
焼きそばの合計は25人前。腹ペコ少女であっても、ややきつさを感じるレベル。
焼きそば店の中は、本日一番の盛り上がりを見せることとなった。
「ミサキちゃんの大食いを見られるぞ・・・・・・」
「腹ペコ少女の大食いは楽しみ」
大食いの需要は日に日に増している。自分では食べられない分、他の人に夢を託しているように思えた。焼きそば25人分を食べられる女性は、希少な存在といえる。