342章 練習
ミサキは本番に向けて、練習に取り組んでいた。
気温はやや低めで、太陽は雲に隠れている。コンデイションとしては、まずますといえるのではなかろうか。
「ミサキちゃん、体はどう?」
マイは心配らしく、練習の付き添いをしている。ミサキは一人ではないことに、心強さをおぼえた。
「1キロくらいならいけるけど、10キロはかなりきつい」
腹ペコ少女は、基本的に省エネ生活。ランニング、ウエイトトレーニングなどで、汗を流す機会は少なかった。仕事をしているとき以外は、慢性的な運動不足である。
本番に備えて、体重を徐々に増加中。42キロだった体重は、44キロを突破することとなった。こちらの世界にやってきてから、最高体重を更新した。
ミサキの身長は160センチ。44キロになっても、かなりの細身である。標準体重に近づけるためには、8~10くらいの増量は必要だ。
「ミサキちゃん、お水をたくさん飲もう」
「うん。そうだね」
近くの自販機において、500ミリリットルの水を20本購入。ランニングの汗を補うためには、これくらいの水分は必要となる。
大量の水を飲んでいるさなか、元トップアイドルと顔を合わせる。現在は幅広い分野におい
て、顔を出している。
「ミサキちゃん、マイちゃん、こんにちは」
ミサキ、マイの順番で挨拶する。
「アヤメちゃん、こんにちは・・・・・・」
「こんにちは・・・・・・」
アヤメの視線は、大量の水に向けられた。
「ミサキちゃん、ものすごい水分だね」
「腹ペコ女性だから、大量に水分を取らないと・・・・・・」
「ミサキちゃん、本番リハーサルしてみよう」
「本番リハーサルは無理だと思う。本番ぶっづけで走ることになる」
予行演習をすると、体重はあっという間に減少しかねない。極端な体重減をすると、あの世行き確定だ。
「わかった。私は一人で走ってくるね」
アヤメはランニングをスタートさせる。練習に真剣に取り組んでいるのか、足の動きはスムーズだった。