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486 お名前会議開催

サーヤがギン様にくるまって寝てる間⋯

「ふへへへ⋯もふもふ~ぅ」すぴーむぎゅう~
『サーヤ⋯』
『悪いなギン様。後でブラッシングするから』

その傍らでは、ドワーフさん達のお名前会議が開かれている。

『ドワーフにピッタリな名前と言えば?』
『やっぱり石の名前じゃないか?』
『俺たちもそうだしな』
親方たちが大っきな湯のみでズズっと緑茶を飲みながら言います。

『私らも石の名前だよね』
『まあ、何人か若干生命の危機を感じたけどね』
『ああ、なんか食べられそうになったねぇ』
その時を思い出したのか、おかみさんが盛大にぶるるっと震えて、やっぱり大きめな湯のみでお茶を飲んでいる。

『あらあらまあまあ、その節はごめんなさいね。本当に食べられそうになってたのね』
『やっぱり』
『生命の危機だった』
おばあちゃんが謝り、フゥとクゥはやっぱりと頷いてます。

「むにゃ⋯くりょまめ、はちみちゅ、りんご⋯おいち」じゅるり

『『『ヒッ!』』』ぞくうっ

『サーヤ⋯』
『なんの夢見てんだ?』
サーヤの寝言にドワーフさんが震え上がり、ギン様とおいちゃんは呆れている。

『じゃあ、俺達も石の名前がいいのか?』
『ドワーフだしな。石の名前ならいいよな』
『どうせならかっこいい名前がいいけどな』
『おや。かっこいい名前もいいけどね』
『私らのことも忘れてもらっちゃ困るね』
『そうだね。いかにもないかつい名前はちょっとね』
ドワーフさんたちも意見を言うことを忘れません。自分たちの名前だしね。

『でも、親方たちの時は見た目で決めましたよね?』
『お話を聞く限り今回は意味にこだわった方がいいんじゃないですか?』

シーン⋯

いつもサーヤの名付けに付き合っているフゥとクゥが、そう提案すると、ズズっとお茶をすすっていた面々がピタッと止まってフゥとクゥを見た。

『『え?え?』』
『も、もしかして私たち』
『何かまずいこと言ったか?』
静まり返って瞬きもせずに凝視され、震え上がるフゥとクゥ。すると

『『『それだ!』』』
『『『それだよ!』』』
親方たちがワッと盛り上がった。

『『え?え?』』
フゥとクゥ、今度はあまりの盛り上がりにどうしていいか分からず、オロオロ

〖やるじゃない!フゥもクゥも!〗バシバシっ
『『え?え?いたた?』』
ジーニ様に偉いわ!と、背中をバシバシ叩かれるフゥとクゥ。

〖そうですね。素晴らしい意見ですわ〗
〖ふむ。流石、初めからサーヤの名付けを助けているだけありますね〗
シア様とエル様からも褒められるフゥとクゥ。
『『え?え?』』
『そんな』
『大したことは』
もはや、褒められすぎてかえって居心地が悪いフゥとクゥ。

『まあまあ、その辺にしてあげないとぉ。二人とも顔真っ赤よぉ?』
珍しく結葉様がサーヤ以外のことでまともな事を言った!

『『え?』』
助けられたはずなのに固まるフゥとクゥ。

『お、お母様?どうなさったのですか?』
『にゃ、にゃんか悪いものでも食べたにゃ?』
『お、お母様がサーヤちゃん以外を、ふ、普通にお助けになるだなんて』
『『『絶対におかしいですわ(にゃ)!!』』』ぶるるっ
アイナ様、リノ様、ニャーニャにゃん、信じられないものを見て震え上がってます。

『ええ~。何よぉ、失礼ねぇ~。ねえ?みんなぁ⋯あらぁ?』

しーん

今度はみんなが信じられないものを見た!という顔で結葉様を凝視してます。

『んもう。みんなまで酷いわぁ』ぷんぷん

日頃の行いの成果ですね。結葉様。

『あ、あらあらまあまあ、結葉様、ごめんなさいね。ほほほほ』
『ごめん。信じられないものを見た時、人は固まるもの』
『あらあらまあまあ、みあ?だめよ。本当のこと言っちゃ。ほほほほ』
いち早く意識を取り戻したおばあちゃん。何とかフォローしようとしたが、似た者編みぐるみコンビ。謝っているのか、貶しているのか?

『むう~。まあ、良いわぁ。ほらほらぁ、フゥとクゥがせっかく良い案を出してくれたんだものぉ。はやく話し合いをしましょう。凛とゲンなら石の意味知ってるでしょう?』
ケロッとして話しを進めようとしている結葉様。またしても、まともなことを言っているように聞こえるが、普段の結葉様に耐性のある面々は

『ま、まさかと思いますがの?結葉様は、早く名付けをしたいが、自分で考えるおつもりではなく』
『全てが決まってから、名付けだけをなさるおつもりだったりは』
『『ありますまいの(ぉ)?』』
じぃじと亀じぃが勇気を出して恐る恐る聞くと

『ええ~?そんなことないわよぉ?私だって一応いくつか考えてるのよぉ』
結葉様が心外だわぁとぷりぷりしてるが

〖え?結葉が?〗
〖まさか本当に?〗
〖私は蒼と青滋の意見が正しいと思いますね〗
神様たちも信じてないようです。エル様に至っては全く信じてないみたいです。じぃじたちの意見に賛同してます。

『ふむ。そういうことであれば、結葉の考えている名前とやらを、聞かせてもらったら良いのではないか?(あまり聞きたいとは思わないが)』
アルコン様がそう提案すると

ぴゅい『おとうしゃん』
きゅい『あたまいい~』
『そ、そうか?』
モモとスイがまたまた珍しくお父さんを褒めた!嬉しさと照れを感じるお父さん!だが、
ぴゅい『でも~』
きゅい『さいご~』
ぴゅいきゅい『『わるいことかんがえたでしょ~?』』
『そ、そんなことはないぞ』
それで終わらないのがモモとスイ。
ぴゅいきゅい『『ええ~』』
ジトッとした目でアルコン様をじーっと追い詰めるモモとスイ
『ほ、本当だぞ』
じりじりと追い詰められるお父さん、変な汗が⋯
ぴゅいきゅい『『まあ、いっか~』』ふいっ
とつじょ興味を失ったようなモモとスイに
『へ?』
翻弄されるおとうさん

『も~モモとスイ、アルコン様で遊んじゃダメでしょ~?』
ぴゅいきゅい『『えへへ~♪』』
『は?』
ハクの爆弾発言に笑ってごまかすモモとスイ。ついていけないお父さん。

〖あ~アルコン、気の毒に〗
〖モモとスイはお父さんで遊ぶことを覚えてしまったようですね〗

『な⋯っ』がくう
女神様二人の容赦ない分析にアルコンお父さん、とうとう崩折れた

〖まあ、何事も修行ですよ。フッ〗ぽんぽん
『ぐっ』ぐしゃ
慰めてるようで突き落とすエル様。一番容赦ない。

『ま、まあ、ひとまずアルコン様の仰ることにも一理ありますからのぉ』
『結葉様のお考えになったというお名前をお聞かせいただいたらいかがですかの?』
亀じぃとじぃじ、アルコン様を救う!

『そうですわね』
『お母様のお考えをお聞かせ下さいませ』
『なんだか聞くの怖いけどにゃ』
みんなきっとニャーニャと同じ思い。

『え~聞きたいかしらぁ?』
結葉様は焦らすように聞くと

『うん。聞きたいな~』
ぴゅいきゅい『『きかせて~?』』
『『どんなお名前?』』
『『『かっこいい?』』』
みゃ『かわいいかもしれにゃいにゃ!』
『早く教えて欲しいのだ!』
無邪気に教えて欲しいとお願いするちびっ子同盟たち。その目はキラキラ。擦れた大人たちには眩しいキラキラ。そして、皆思った、出来るならこのキラキラをくすませたくはないと。だが

『ええ~?そんなに言うなら教えてあげるわね~?』
うんうん!と、キラキラおめ目で頷きながら結葉様の言葉を待つちびっ子たちと、恐る恐る聞く大人たち

『例えば~オル・ハリ・コンとかぁ~』

『え?』と、ちびっ子たちが固まった。が、おかまいなしに結葉様は続ける

『アダ・マン・タイトとかぁ~』

『オルハリコン?アダマンタイト?三分割?』
自分たちに付けられそうになっている名前に顔面蒼白になっていくドワーフさんたち。ちびっ子たちのキラキラももはや消えた⋯

『あとは~ヒヒ・イロ・カネとかぁ?』

『ヒヒイロカネ?』
『どこをとっても嫌だよ』
『同じく』
震え上がる奥様方⋯ぶるるっ

『あと~凛に教わった~』

『あらあらまあまあ?私?嫌な予感しかしないわぁ』
『何教えた』
不穏な言葉に嫌な汗が背中を伝う(気がする)おばあちゃんに、ツッコミを入れるみあちゃん。

『あっ!そうそう!ひー・ふー・みー・よー・いつ・むー?』

『あらあらまあまあ、それは数え方⋯』
『まさかの数字きた』
さすがのおばあちゃんもガクッと、毒舌みあも言葉を失う

『ねえ?ちゃんと考えてるでしょう?⋯あらぁ?』

しーん

『ひ、ひでぇ。サーヤの鉄・鉱・石、並だ⋯』
『ゲン、一緒にしてやるな。少なくともサーヤは泣きながら考えてたぞ。それに数字の方はすでに付いてるはずだ。鳥に』
『そ、そうだったな。悪かったなサーヤ』

「うにゅ~ぎんしゃま、すち~」すぴーにまぁ~

『お、俺は?』
『ゲン、寝言相手に大人気ないぞ。ふふふ』
サーヤの寝言においちゃんは若干のショックを受け、ギン様はちょっぴり優越感

そして
『い、嫌だ!』
『断固拒否する!』
『なんだその適当なのは!?』
ドワーフさん達の反乱!
『私らだって!』
『頼むよ!』
『誰かもっといい名前を!』
奥様たちも必死!

『ええ~?だめかしらぁ?』
心底、何でかしらぁ?と、納得いかない結葉様

『『『当たり前だ!』』』
『『『断固反対!!』』』
ドワーフさんたち、魂の叫び!

『うう~ん』
『こりゃさすがに』
『酷すぎるな』
『こうなりゃ凛さん』
『頼むよ。凛さんなら』
『そういうの詳しいだろ?』
親方やおかみさんたちも流石に息子たちに同情⋯
それはみんな同じ。と、なれば

『あ、あらあらまあまあ?』だらだら
『みあ、知らない』こそこそ
『あらあらまあまあ、みあ、私たち仲間でしょう?』ガシッ
『さあ、知らない』バタバタバタ

みんなの視線がおばあちゃんに

『あらあらまあまあ?さすがにほら、たくさんは知らないわよ?それこそ辞書でもないと⋯』ハッ

〖辞書?〗
ジーニ様が言葉尻をしっかり拾ってしまった。

『あらあらまあまあ、失敗?』だらだら
今度はみんなの目が⋯

ギン様に包まれすやすや眠るサーヤに

『え?』
『な、なんだ?』
おいちゃんとギン様、急にみんなの視線が集まり慌ててサーヤを隠す
「うにゅ~しゃむぅ?」ぶるり
サーヤも何か感じた?

『お願いだよ。サーヤちゃんの異世界辞書でさ』
『調べてやっとくれよ』
『さすがにアレは不憫だからさ』
『俺らからも頼む』
『ゲンたちが作りたいもんまた手伝うからよ』
『このとおり!』
親方たちが必死のお願い。

〖あ~今回ばかりは〗
〖みんな同じ思いですね〗
〖師匠、お願いします〗
神様たちもお願いする始末。後ろではちびっ子たちまで縋るような目。うるうるうる

『わ、分かった。分かったから。でも、サーヤが起きてからだぞ』
『そうだな。全てはサーヤが起きてからだな』

『『『ああ』』』
『『『頼むよ!』』』

あくまでサーヤが起きてから⋯
寝ている間にまたまたとんでもないことになったサーヤでした。

「ふにゅ~うぅぅ しゃぶ⋯」ぶるっ

しおり