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464 上空から見たものは⋯

魔物が何かを体に取り入れたのでは⋯
そう感じて口に出すと、皆さん考え込んでしまわれました。

私は他の淀みにも目を向けると気になる場所を見つけてしまいましたの。

『エル様、アルコン様、あそこへ降りることは出来ますか?』
私はある場所を指差します。何か違和感を感じるのです。

『あそこ?他と変わらぬように見えるが』

アルコン様が目を細めて指差した先を見ていますが、他と違いは見られないようです。私の思い過ごしなのでしょうか?再び考え込みそうになっていると、肩をポンッと軽く叩かれました。

〖私にも別段変わったようには見えませんが、アイナの眼には何か見えているのかもしれませんね。行ってみましょう〗
エル様は考え込みながらも、私の意見を尊重してくださいましたわ。

『エル様、ありがとうございますですわ』
『ありがとうですにゃ』
信用に答えるためにもしっかり見なくては⋯!

『では、降りるぞ。あの渦の少し手前で降りる。各々シールドを張った方がいいかもしれん。もしや、あの渦、生きたものを取り込もうとするかもしれんぞ。気をつけろ。特にニャーニャ、アイナから離れるなよ』
アルコン様がニャーニャに言うと、何を思ったかニャーニャは⋯

『はいですにゃ!ニャーニャは緊急事態に備えて安全なところに入るにゃ!』すぽんっ!
『え?ニャーニャ?何をしてるのですか!?なんて所に!?』
慌ててニャーニャを引っ張りだそうとしたのですが、どういう訳か離れません!
『ここがいちばん安全な場所だから、危なそうな時はここに入るように言われたのにゃ!案外居心地いいにゃ!気に入ったのにゃ!』
で、ですが殿方がいらっしゃる前でそこは⋯!

〖ちなみに、ニャーニャにそれを教えたのは?〗
『にゃ?ジーニ様とシア様と結葉様ですにゃよ?』

当然!と言う感じでエル様の質問に答えるニャーニャ。あの御三方はニャーニャに何を仕込んでいるのですの!?特にお母様!お仕置ですわよ!

『え~?なんで私だけぇ?』

なんでじゃありませんわ!ん?何故かお母様の声が聞こえた気が?

〖やはりそうですか⋯はぁ。くれぐれも凛の前ではやらないでくださいね〗
巻き込まれたくはありませんから。

エル様?今、巻き込まれたくないと心の声が聞こえたような?

『にゃ?よく分からにゃいけど、分かりましにゃ。でもここ落ち着くのににゃ~。新発見にゃ』
『やめてくださいませ!私も凛さんに飛び蹴りされたくはありませんわ!』
そうですわ。ニャーニャが入り込んだのは私の、む、胸の谷、間⋯ごにょごにょ。は、恥ずかしくてお嫁に行けないですし、凛さんが恐ろしいですわ~

『大丈夫にゃ!ご主人はお嫁に行く予定はいにゃ!凛さんもきっと大丈夫にゃ!』
『う、うわぁん!ひ、酷いですわぁ』
『ご主人、大丈夫にゃ!お嫁さんどころか男の影すらないにゃ!』
『う、うわぁぁんっ!』
ニャーニャがまた酷いですわぁ

〖ああ、まあ、なんと言いますか、アイナ気をしっかり⋯〗
『まあ、なんだ、ほらアイナ着くぞ。備えてくれ』
うううっエル様とアルコン様の目がなんだか生温いですわぁ

『そうにゃ!ご主人そんなこと気にしてる場合じゃないにゃ!しっかりするにゃ!』
『うううっ』
そんなこと?やっぱりニャーニャが酷いですわぁ

〖ニャーニャ⋯〗
『容赦ないな⋯』
とってもお二人から可哀想という気持ちが伝わって来ますわぁ。それはそれでいたたまれませんわぁ

『ほら、ご主人行くにゃよ!』ぺしぺし!
うううっどこを叩いているのですかニャーニャ

〖さ、さあ、気を引き締めていきましょう〗
『そうだな。我は何があってもすぐ飛び立てるようにこのままの姿で行くぞ』
〖分かりました〗
『よ、よろしくお願い致しますですわ』
『よろしくですにゃ!』
少し歩くと

〖一度止まりますよ〗
『ああ』
『はいですわ』
『はいにゃ』
エル様の声で一度止まり様子を見ます。目の前には

『これはお姉様たちが見たという物と同じなのでしょうか?』
『さあ、分からないにゃ。でもきっと無関係ではないにゃ』

手を伸ばせば届きそうなところに黒く渦巻く闇が⋯
外側はまだ薄いけれど奥に行くほどやはり濃くなっているように見えますわ。

〖ふむ〗
エル様が闇に手を伸ばすと、闇も手を伸ばすようにエル様に向かって絡みついて来ようとしましたわ。
『エル様!』
『手を引っ込めるにゃ!』
〖大丈夫ですよ〗
エル様が手を戻すと闇は名残惜しそうに元に戻りましたわ。意思があるように

『気持ち悪いにゃ』
『そうですわね。意思があるようですわね』
『乗り移る相手を見つけているのか?』

〖ふむ〗
エル様が少し考えてからもう一度手を伸ばすと
『今度は反応しない?』
『体の周りにシールドを張れば大丈夫ということでしょうか?』
〖どうでしょう。この辺りなら大丈夫ということでしょうか?奥に行くと分かりませんが〗
『行って見るしかないのにゃ!行くにゃ!』
そうですね。とにかく確かめなくては奥に何があるのか

〖そうですね。行きますよ〗
『ああ』
『はいですわ』
『はいですにゃ』
シールドを張り奥に向かって進むと

『ご主人、なにか見えるにゃ?』
『いえ、どんどん靄が濃くなって、なんと言うか光を吸い込んでいるような?空気もシールドを張っているにも関わらず重苦しく感じますわ。あっ!もう少し先に真っ黒な塊が見えるのですが。靄がそこに集まっているようにも、そこから出ているようにも見えます。とにかく気持ちが悪いですわ』
何か良くないものがあります。

『まだ見えないにゃ』
『というか、視界自体が大分悪くなっているな』
〖ですが、もうすぐなようですよ〗
『そうですわね。止まってくださいませ』
そう。もう、すぐそこに

『魔物が倒れてますね。命が尽きようとしているようです。そして体の中に何かあるようです』
禍々しい何かが

〖ふむ。照らしてみましょうか〗
エル様がそう言うと手を前に翳すと魔物の上に光の玉が現れ、周りを照らす。そして見えたものは

『にぎゃーっ』
『うっ、これは?』
『なんの魔物だ?体が真っ黒?目だけが赤く血走っているな』
〖ボア、でしょうか?体が崩れ始めているようですね〗
魔物の体がボロボロと崩れ始めましたが、ですが胸の辺りだけ崩れないものが?ハッ!

『皆さん気をつけて!何か出ますわ!魔物の胸の辺りっ』
咄嗟に叫んだが、その瞬間、魔物の体が崩れ去りぶわっと闇が広がった

『にぎゃーっこないでにゃーっ』
『ニャーニャ、大丈夫ですわっ』
『ああ。我とエル様で二重にシールドを張っている。この中には入れまい』
〖周りにいた魔物がいくつか呑まれたようですね〗
『大地と植物もですわ』
『なんてことにゃ⋯』
『終わりそうだぞ』

爆風のようなものが治まると、そこには濃い瘴気が充満していた。

『お、終わったにゃ?』
『果たして終わったと言って良いものなのでしょうか?むしろ』
『悪夢の始まりのようだな』
〖そうですね。アイナ、魔物の最期に何が見えましたか?〗

崩れ去る魔物に見えたもの

『魔物の胸の辺りだけ、崩れるどころか何かが集まって固くなるようでしたわ。核のようなものでしょうか?それが体が崩れた瞬間に一気に広がって、一部は近くにいた魔物の中に、残りは空中だけではなく地面や植物に染み込んでいったように見えましたわ。あれは魔物の命を奪い周りから瘴気を取り込み、より濃い瘴気にして周りに撒き散らしていたのでしょうか』
何とも気持ちの悪い⋯

〖そうですね。それに加え地面や植物に入れば、そこにある植物を食べても魔物の中に入る。体内に瘴気を宿した魔物は移動し、移動した先でこれをどんどん繰り返せば〗
『たちまち瘴気は広がるな。例え全て浄化しても、種をひとつ撒けば』
『たちまち元通りにゃ』
『キリがないですわね』
どうすれば⋯

〖今はひたすら見つけたら浄化するしかないでしょう〗
『だが、それではその場しのぎで解決にはならないのではないか?』
その通りですわ。瘴気を撒かれようともはじき出すくらいのことが出来なければ

〖そのことに関しては少々思いついたことがあります〗
『ほんとにゃ!?』
〖ええ。ですが、それは後ほど。今は見つけた瘴気を急いで浄化して魔神達にも報告しなくては〗
『そうだな。急ごう』
〖アイナは今見たことを他の精霊王たちに伝えてください。そして浄化した場所を出来れば記憶しておいて欲しいと〗
『分かりましたわ。直ぐに伝えますわ』

私たちはすぐ様、エル様がいつの間にかしっかり捉えていた瘴気に犯された動物たちと地面と植物を浄化し、空から次の場所を見つけては浄化する作業を繰り返したのですわ。
その合間にきちんとお姉様やお兄様、それにお母様にもお伝えしましたわ。
あとは里に帰り、一応親方の息子さん達にもお話を聞かないといけませんわね。
その時、アルコン様には人型になっていただかないといけませんわね。はぁ⋯

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