314章 おなかは待ってくれない
DARZの歌は終了した。プロが歌うことで、まったく違う曲になるのを感じた。
シノブ、マイ、ユタカ、ホノカ、ナナ、シラセ、フユコはたくさんの拍手を送っていた。ミサキの誕生日を祝っているのではなく、歌に対するものだった。DARZが登場したことで、誕生日会の気分は失われることとなった。
ミサキがしょんぼりとしていると、シノブから声をかけられた。
「ミサキさん、食事にしましょう。本日の主役ですので、遠慮なく食べてくださいね」
おなかはギュルルとなった。つらくなったとき、苦しくなったときであっても、おなかはすくようにできている。食べるタイミングは、一秒たりとも待ってくれない。
「おなかすいた・・・・・・」
腹ペコ少女の特性上、食べないという選択肢はありえない。食事放棄をした瞬間、あの世に旅立つことになる。
DARZは瞳をキラキラさせる。
「ミサキさんの大食いは楽しみです」
大食い少女として、たくさんの人に親しまれている。腹ペコ少女を苦しめ続けた短所は、最大の長所になっている。
ミサキはサンドイッチ20個、鶏のから揚げ20個を食べる。腹ペコの状態だったこともあって、10分で食べきることができた。
DARZは目の前の大食いに、瞳をキラキラとさせていた。
「ミサキさんの大食いは素晴らしいです」
「どうも・・・・・・」
「豪快な食べっぷりを見られたので、とっても満足しています」
シノブたちの調理した料理の多くは、ミサキの胃袋に収まることとなった。調理にはたっぷり
の時間がかかるけど、おなかに入っていくのは一瞬である。
シノブたちは食事に手を付けなかった。誕生日会の主役にしっかり食べてほしいと思っているようだ。
「ミサキちゃん、ケーキを食べよう」
誕生日ケーキを食べ進める。生クリームの甘み、イチゴの酸っぱさ、スポンジの柔らかさは絶妙だった。