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456 とぎとぎの木


しゅっしゅっ

『ふわ~ああ。ねぇねしゃま、きもちいいでしゅ~ぅ。かにょこねんねしちゃいしょうでしゅ~ぅ』
とろ~んとした声ですね~

「えへへ~?しょう?しょう?きもちーでしゅか~?」
『はいでしゅ~ぅ。とろけちゃいましゅ~ぅ』

やった~ぁ♪今、かのこちゃんはサーヤのお膝の上でびろーんてねんねしてます。サーヤはそんなかのこちゃんをブラッシング中です。こわこわタイムの後だから、なおさら至福の時?ってやつです。幸せです。

「さりゃさりゃなぁれ♪きりぇきりぇなぁれ♪」
優しく優しくブラッシングです。
「ふわふわなぁれ♪ちゅよちゅよなぁれ♪」
『ふわわぁ~⋯』
やさ~しく、やさ~しく♪

『鹿の子ちゃん、いいな~。サーヤ、ぼくもおねがい~』
『『ぼくたちも~』』
みゃあ『ココロもおねがいしたいのにゃ~』

ハクたちもブラッシングしたいの~?
「いいよ~じゅんばんこにぇ~」
『わ~い』
『『やった~』』
ココロ『たのしみなのにゃ~』

「おいちゃん、おやかた~、ぶりゃちちゅくって~」
みんなの分おねがいね~

『おう!任しとけ!』
『この位朝飯前だからな!ガハハハ!』


あのすぐ後、結葉様がもう一本とぎとぎの木を育ててくれました。ドワーフさんたちがその木を使って、ブラシを作ってくれます。だって、みんながね

『実際どうやるのか、使ったらどうなるのか見てみたいな』
って言うから、一個サーヤのおててでも持てるくらいの実をもらって、かのこちゃんのお背中をなでなでしてあげたら

『ふわぁ~ぁぁ、きもちいいでしゅ~』へなへな~
「ほえ~?」
って、へなへな~ってなっちゃったの。みんなそれ見て、

『そんなにすごいの~?』
ぴゅいきゅい『『すごいの?』』
『しゅごいでしゅ~ぅ』へなへな~
『『いいな~』』

ってなったんだけど、でも、サーヤのおててがね
「おてて、いちゃいちゃい、かみょ?」
って、なりました。
ほら、松ぼっくりみたいな形してるから。とんがったところがちょっとチクチクなの。
そしたら、みんなが慌て出して

〖サーヤ、痛いの?おてて見せて?まあ、ちょっと赤くなってるわ。ヒール!どうかしら?大丈夫?〗
「あ、あい。だいじぶ。あいがちょ」
〖良かったわ〗なでなで
いたいかも?って思ったくらいだから大丈夫だよ?心配しすぎだよ。そして

『ん~これ半分に割って持ち手ついた板につけたらいいんじゃねぇか?こんくらいなら今できるよな』
『ああ。もちろん』
『問題ないな』
って、親方たちが話し出しちゃいました。そしたら

『あらあらまあまあ、ちょっと待って?これならいいかしら。サーヤ、ちょっと髪型いじるわね』
「あい。どーじょ」
おばあちゃんが何かを思いついたみたいで、サーヤの髪の毛を梳かしだしました。
『普通に梳かすなら親方の案の物がいいんだけど、こういう風に⋯』
おばあちゃん、ブラシもどきを髪の毛の表面じゃなくて髪の毛の内側に当てて、毛先をクルン。
『ほら、こんな風にクルンとさせるなら中心?お尻?に柄を刺すような形の方が使いやすいかも』
そう言いながらサーヤの髪の毛のを内巻きにくるんくるん♪
『ほらね?あらあらまあまあ、サーヤこの髪型もかわいいわねぇ』
「えへ~?かーい?」
『ええ。可愛いわよ~』
「えへへ~♪」
頭を軽く振ってぽわんぽわんってさせると

〖ぐふぅっ〗ぶあっ
『きゃーっジーニ様~っしっかりして下さい』
ん?ジーニ様とフゥが騒いでる?

『ん~それなら、なぁ結葉様』
『なぁに?ゲン』
『これってさ、熱の変化に強いか?熱くしたり冷たくしたり』
回したり触ったりしながら結葉様に聞いてます。
『ん~大丈夫よぉ。ただ、繰り返しはダメかしら?保護の魔法をかけても数回かしらねぇ?』
『分かった。そこは今からやるのが成功したら対処を考えるとして、サーヤ、髪貸してくれな』
「あい。どーじょ」
何するのかな?

『ちょっと細めの実を縦に当てて、こう、くるくるっと。そんで【ヒート】少し温めて、【クール】少し冷やすと⋯どうだ?』
おいちゃんがブラシを外すと

『あらあらまあまあ、巻き髪が出来たわ~これも可愛いわね~』
「ふお?」
くるくる?

『髪の毛痛まないか心配だったけど、それも大丈夫そうだな。念の為ヒールかけながらやったり、髪用のローションとか使ってもいいかもな』
『そうね。ゲンさん、それもうひとつ下さいな。私は反対からやるから』
『おう。これなら同じ太さかな?』
『ありがとう。こうして⋯うん。やっぱりちゃんとした柄が欲しいわね~。これ、工夫したらヘアアイロンも出来るんじゃないかしらぁ。もちろん火傷しないものね』
『そうだな。色々出来そうだけど、安全性と耐久性を考えないとな』
『そうねぇ。⋯はい。できたわよサーヤ。あらぁ、このクリクリの髪型も可愛いわ~ふわふわね~』
「えへへ~?かーい?」
『ええ。とっても可愛いわよ。はい鏡』
おばあちゃん、それどこから出したの?お腹?まあ、それは後で聞くとして、鏡を見ると

「ふわ~♪こりぇ、さーや?」
ふわふわ~なみなみ~♪
「おひめしゃまみちゃい~♪えへへ~♪」
『うんうん。可愛いぞ。サーヤ』
『あらあらまあまあ。かわいい孫の髪形で遊べるなんて。嬉しいわあ』
「えへへ~♪」
おばあちゃんにも、おいちゃんにもほめられちゃった~♪

『サーヤサーヤ~』
『これあげる~』
『はなかんむりだよ~』
『『『はいっ』』』
妖精トリオが頭の上に白いお花の花冠をのっけてくれました!

「ふわ~ああ♪きりぇ~あいがちょ!」
すごいすごい~

『えへへ~まえにシアさまにつくったでしょ~?』
『おもいだして、つくったの~』
『そのかみがたにぴったりとおもって~』
『『『おもったとおり!かわいい~♪』』』
妖精トリオが喜んでくるくる踊ってます

『あらあらまあまあ、良かったわねぇ。本当のお姫様みたいよ。服はオーバーオールだけどね』
『うんうん。かわいいな。妖精トリオありがとな』
「えへ~あいがちょ~♪」にこにこ
『『『どういたしまして~』』』てれてれ
すごい嬉しい~♪ん?

〖ぐはぁっ〗ぶしゃあっ
『きゃーっ!ジーニ様、しっかりーっ』
『ジーニ様!鼻血止めて!自分でヒールかけてください!』
ジーニ様どうしたのかな?フゥとクゥもいるみたいだから大丈夫かな?

『へぇ、すごいね。これ』
『うんうん。凛さん、こっち来ようね』
『もっと詳しく話しを聞こうかね』
『あらあらまあまあ?サーヤ~』
「おばあちゃ~んっ」
あああっおばあちゃんがおカミさんたちに連行されちゃいました!

『ありゃ無理だ。しばらく帰って来ねぇな』
『そうだな。さて、ゲンとサーヤはこっちだな』
『鹿の子あのままに出来ねぇだろ?さ、作るぞ』
へにゃっとなったままのかのこちゃん見て親方たちが言います。

「ふあっ?おいちゃんっ」
『えええ?どうしてこうなった?』
『うふふ。なるわよねぇ?無意識って怖いわねぇ』うんうん
結葉様?ひとりウンウンしてないで助けて?


って、いうことがあって~

『まあ、簡単なやつならな、すぐだ』
『ガハハハ!新しいもん作るのは楽しいからな!手の込んだモンは後で作るからな!みんなの分作ってやるぞ!』
まず手始めにかのこちゃん用のブラシを作って今に至るてやつです。

ぴゅいきゅい『『おいちゃん』』
『わたしたち』
『もふもふない』
『でも~』
『ブラシ姫たちも欲しいのだ~』
モモとスイに、妖精トリオと姫ちゃんが寂しそうに言ってます。

『大丈夫だぞ!ブラシってのは毛を梳かすだけじゃないんだぞ!モモとスイのも作るからな』
『妖精トリオと姫は髪用に作ってやるからな!待ってろ!ガハハハ』
ぴゅいきゅい『『ほんと~?』』
『『『やったー♪』』』
『それじゃ、姫たちもサーヤにブラッシングしてもらえるのだ!』
ぴゅいきゅい『『わ~い♪』』
『『『サーヤーっ』』』
『お願いなのだ~♪』
「あい!まかちて!」
良かった~♪みんなの分作ってくれるって!おいちゃんたち、お流石です!

『よし!こんなもんか。ほら、サーヤ、ハク用できたぞ』
「あ~い!じゃあ、こうちゃい!」
次はハクだよ!

『わ~い♪交代だよ~』
『ふわぁ。きもちいいでしゅよ~。ねぇねしゃま、ありがとごじゃいまちた。あれ?なんか、からだがかるいでしゅ?』
ぴょんぴょんぱたぱたっ
かのこちゃんが、体を動かして
確認してます。

「ん~?なんでかにゃ?」
ブラッシングしただけだよ?
『わからないでしゅ。でも
なんかつよくなったきぶんでしゅ』
「ん~?なんだりょね?」
『ふしぎでしゅね?』
わかんないね~

『サーヤ~。交代していい?』
あっしまった。ハクの番だった!

「しょうでちた。ごめしゃい。こうちゃい」
『ごめんなさいでしゅ』
『いいよ~』

それじゃ、交代して~
「はく、ごりょんちて~」
届かないよ~
『うん。おねがい~』ごろん
「あ~い。さりゃさりゃなぁれ♪きりぇきりぇなぁれ♪」
優しく優しくブラッシングです。
「ふわふわなぁれ♪ちゅよちゅよなぁれ♪」
やさ~しく、やさ~しく♪
「もふもふなぁれ♪もふもふもふもふもふもふなぁれ♪ふへへへへへ」じゅるり

『ふあ~ああ、すっごいきもちいいよ~。でもぉ、なんか、ぞくっともするかも~?』
「きのちぇいきのちぇい~♪もふもふなぁれ♪もふもふもふもふ♪ふへへへへ~」
ぴゅいきゅい『『きのせいじゃないよね~?』』
『はくしゃま、たべられちゃいそうでしゅね』
『『かのこちゃんにも分かるよね~』』
『『『がんばれハク~』』』
みゃあ『でも、みるみるかわってくにゃ!』
『すごいのだ!ハクが輝いて見えるのだ!』
もふもふもふもふアップだよ!しっぽまでちゃんともふもふにしないとね~
「もふもふ♪もふもふ♪もふもふ♪ふへへへへ~」じゅるり

『ああ、僕の天使も輝いてるよ!』
『あにしゃま、おしゃわりきんちでしゅよ。このふわふわがきえちゃうのはやーでしゅ』
『そ、そんな⋯』がくぅ
『我が息子はあんなに残念だったろうか』
『あなた、仕方ありませんわ。鹿の子は天使ですから』
『妻よ、お前もか⋯』
イヒカ様とかのこちゃん家族は仲良しだね!


こそこそ
『ねぇえ?ジーニ様ぁ?』
〖何かしらぁ?結葉〗ニヤニヤ
『サラサラ、きれきれ、ふわふわは分かるんだけどぉ、あっもふもふはもちろん分かるわよぉ。でもぉ、つよつよって何かしらぁ?』
〖ん~強くなれってことかしらね~?〗
『なるほどぉ。それからねぇ?さっきからサーヤの手からブラシを通して魔力が流れてる気がするんだけどぉ?気のせいかしらぁ?』
〖気のせいじゃないわねぇ。浄化と~癒しと~強化かしらぁ?守護も入ってるかしらねぇ?〗
『あら~やっぱりぃ?』
〖うふふ⋯無意識って怖いわねぇ〗
『ほんとねぇ。うふふ⋯』
遠い目をして眺めるジーニ様と結葉様。サーヤファミリーもしっかり仲良くやらかしてるよ。そして更に⋯

じーっ
『どうしたんだい?凛さん』
『それは実じゃなくて幹だよ』
『さっきから何を考え込んでるんだい?』
じーっと幹を見つめるおばあちゃん、なんかブツブツ言ってるみたいです。

『ねぇ?結葉様、この幹って少し樹皮を剥いても大丈夫かしら?』
『え?樹皮?ん~そうねぇ?めくれてる所は大丈夫そうよぉ。なぁに?これも染め物に使えるのかしらぁ』
結葉様は草木染めを覚えてたんだね。
『あらあらまあまあ、それはまだ分からないけれど、少し試したいことがあってね』
おばあちゃん、また何か思いついちゃったみたいです。

『試したいこと?何かしらぁ?』
『そうねぇ、おかみさん。申し訳ないけどこの辺りを剥いてもらっていいかしら?』
おばあちゃんが指さしてお願いします。

『ん?お安い御用さ。この位かい?』
『ええ。それをね、こういう形にしてもらいたいんだけど、大きさはこの位で』
おばあちゃん、何やら地面に書き書き
『ふんふん。太めの方が上下丸くて、細めの方は先をとんがらすんだね。この位なら錬成でいけるね。【錬成】出来たよ』
『そうしたら、表側を大まかに平にしてもらって』
『ふんふんこんな感じかね?』
『うんうん。いい感じね。じゃあ、結葉様ちょっと手を貸してくださるかしら?』
『手?何をすればいいのかしらぁ?』
『ふふ、文字通り、手を出して貰えれば大丈夫よ』
『ええ~?はい。どうぞ?』
結葉様は訳が分からないまま、座って手を出すと、おばあちゃんが結葉様の爪を、

シュッシュッシュッ

『なんだいなんだい?』
『爪を削ってるのかい?』
『なら、こうもっとしゃこしゃこやった方が早いんじゃないかい?』
おかみさんたちが興味津々で覗き込んでます。

『あらあらまあまあ、それじゃダメなのよ。一定方向に丁寧にしないといけないの。爪が傷んでしまうのよ』
シュッシュッと規則正しいリズムで削るおばあちゃん。爪の形を整えたら、

『え?爪の表面も削るのかい?』
『爪が薄くなっちまうんじゃ?』
『そんなことして大丈夫かい?』
心配するおかみさんたちとは対照的に
『うふふ。楽しみね~』
と、にこにこ見てる結葉様。やっぱり大物。

『あらあら、心配しなくて大丈夫よ。そうねぇ、これがいいかしら?これで表面の凸凹を平にして』シュッシュッ
『更にこの裏面のツルツルな方で』キュッキュッキュッ

『ええ?それは、磨いてるのかい?』
『すごいね。爪に透明感っていうのかい?』
『なにか塗った訳でもないのに輝いてるよ!』
おかみさんたちがびっくりしてます。

『あらぁ~。すごいわねぇ。ピカピカだわぁ』
結葉様はうっとり。
『何か塗るにしてもこれをしてからの方が綺麗に仕上がるのよ。この世界にネイルがあるかは分からないけど、色をつけなくてもキレイでしょ?あと、おしゃれじゃなくて、ギン様たちの爪のお手入れにも使えるんじゃないかと思うのよ』
おばあちゃんが、ヤスリの大きさや形、何より荒さを変えれば色々使えそうだと説明してます。

『木工品とかにも使うそうね。さすが結葉様の作った木は万能ね~』
『あらぁ、嬉しいわぁ。もっと褒めてもいいのよぉ♪』
結葉様がご機嫌です。

『なるほど、ほんとだね』
『この木は研究しがいがあるね』
『結葉様、あとで私らの家の近くにもこの木育てとくれ』
おかみさんたち、目が燃えてます!
『いや~ん。そんなメラメラしないでも育ててあげるから大丈夫よぅ』
『『『約束だからね』』』
『はいはい。分かってますよぅ』
結葉様が気迫に負けました!

そして⋯
『はい。完成よ。結葉様いかがかしら?』
ついに十本指ピカピカに!

『あらぁ、すごいわねぇ。つやつやピカピカねぇ。それにずっと触っていたくなる滑らかさだわぁ。なんか気持ちいいわねぇ。凛、ありがとう』
『どういたしまし⋯て?』ぽんっ
『あ~凛、頑張ってぇ♪』
『あらあらまあまあ?』
さすがに嫌な予感のするおばあちゃん

〖凛?私にもお願いね?〗
『私もお願いしますね?』

『あらあらまあまあ?』
やっぱり、ジーニ様にフゥ⋯

〖『うふふふふふ。逃がさないわよ⋯』〗

『あはははは⋯』
しまったわね、せめて実験台はジーニ様にすれば良かったわ。人選ミスね。

おばあちゃん、頑張って!!

こうして、絶滅したと思われた『とぎとぎの木』は、聖域で着実にその地位と数を上げていくのでした。

しおり