300章 無期限休業
エマエマの無期限休暇が発表された。超一流歌手とあって、インターネット、テレビ、新聞をにぎわすトップニュースとなった。
仕事に早く復帰できるよう、体をしっかりと休めている。外で遊びまわらないところに、プロ意識の高さを感じさせた。
エマエマはリラックスチェアで体を休ませていた。超一流のリラックスチェアということもあって、大いに効果を発揮している。
リラックスチェア以外にも、自動マッサージ器なども置かれている。使用することによって、回復力をおおいに高められる。
トレーニングルームも設置されている。30種類ものトレーニング用の道具があり、用途によって使い分けることができる。
テレビをつける。「巨乳美女オールスターズ」VS「貧乳美女オールスターズ」の試合が開催されていた。若い女性を重視する姿勢は、まったく変わっていない。
ミサキはテレビを見ていると、エマエマから声をかけられる。
「ミサキさん、何を見ているんですか?」
「テレビを見ています」
エマエマはテレビに映っている女性を見たあと、
「見た目はいいですけど、魅力はまったく感じないですね」
といった。辛辣な言葉に対して、大いに苦笑いをする。ミサキも心の中では、同じようなことを思っていた。
「美人を起用したからといって、視聴率を取れるわけではありません。大切になるのは、人間の中身ですよ」
「巨乳美女オールスターズ」はサーブを放つ。ネットまで届かないどころか、ボールを前に飛ばすこともできなかった。エマエマはテレビ画面に対して、大きな溜息をついた。
「この人たちはプロの選手ですか?」
「わかりません」
プロと呼ぶには程遠いレベルだ。アマチュアといったとしても、納得しないと思われる。一度もプレイしていないといわれて、ようやく首を縦に振るレベルだ。
エマエマは髪をきつく縛り直した。
「さすがにひどすぎますね。人に見せるようなプレイではありません」
父とテレビを見ていたときを思い出す。テレビ画面に映っている芸能人に対して、よくダメ出しをしていた。
ミサキはチャンネルを変えた。次に映し出されたのは、バスケットボールだった。
バスケットボールはイケメンだけで構成されていた。性別は異なるものの、趣旨はほとんど同じだった。
エマエマはこちらもバッサリと切り捨てた。
「美女の次はイケメンですか。テレビはホストクラブではありません」
「そうですね・・・・・・」
チャンネルを変えると、焼きそば店が映し出されることとなった。週に4回ほど仕事をする、なじみのある店だった。
「ミサキさんの仕事している焼きそば店ですか?」
「はい。そうです」
リポーターは、店長に挨拶をする。
「シノブさん、こんにちは」
「こんにちは」
シノブは豚肉のカットを行っていた。
「焼きそばの仕込みをしているんですか?」
「はい。おいしい料理を提供するための準備をしています」
「ミサキさんは出勤ですか?」
「今日はお休みですね。家でゆっくりと過ごしているのではないでしょうか?」
「ミサキさんは職場ではどんな様子ですか?」
「元気にやっていますよ」
「ミサキさんは焼きそばをあまり作らないと聞きましたけど・・・・・・」
「そうですね。カウンターで働くことが多いです」
エマエマは先ほどとは打って変わって、テレビ画面にくぎ付けになっている。バレーボール、バスケットボールのときとは、明らかに別人だった。