290章 エマエマのお願い
焼きそば店の仕事を終えて、自宅に戻ってきた。
「ミサキさん、おかえりなさい」
「エマエマさん、ただいま」
「ミサキさん、袋には何が入っているんですか?」
「パンだよ。ホノカちゃんに仕事を手伝ってもらったお礼をしたよ」
ミサキは帰り際、パン屋で買い物する。お礼をするために、パンを合計で40個買ってきた。パン屋の店長、ホノカは、たくさんのパンを売れたことを大いに喜んでいた。
パン屋の店内で15個のパンを完食。空腹の絶頂だったおなかは、一時的に解放されることとなった。
「ふんわりとした女の子ですね」
「エマエマさん、覚えていたんですね」
「はい。名前、顔は記憶しなければなりません。ファンを大切にする仕事なので、名前を憶えていないとイメージダウンにつながります」
ファンあってこそ、大金を得られる職業についている。名前、顔をおぼえるのは必須スキルといえる。
ミサキのおなかはギュルルとなった。焼きそば店で食べるのを我慢していたため、パンを食べたことは応急処置にとどまっている。
「おなかすいた・・・・・・」
エマエマはお腹の音をきいて、瞳をキラキラと輝かせる。
「ミサキさん、おなかを満たしましょう」
「そうですね」
パンもいいけど、温かいものを食べたい。ミサキは自販機で、天丼10人前、かつ丼10人前、親子丼10人前、牛丼10人前を注文。白米をたくさん食べることで、摂取カロリーを増やす狙いがある。
エマエマは黒目をキラキラと輝かせていた。
「エマエマさん、どうしたの?」
「大食いを見られるのは、とっても楽しいです」
「何回も見たら、飽きないですか?」
「ミサキさんの豪快な食事なら、1000回、2000回であっても楽しめます。大食いをするところを見せてください」
「わかりました」
ミサキは天丼を豪快に食べ進めていく。エビのほのかな甘み、やや辛めのたれは最高のコンビネーションを醸し出している。
「おいしい」
天丼の次はかつ丼。カツの柔らかさ、ジューシーさは体に染みわたっていく。
「ミサキさん、豪快に食べていますね」
「じろじろと見られると、恥ずかしいと感じますね」
男なら気にしなかったかもしれないけど、女性には気になるのかもしれない。
「エマエマさんは、何か食べたんですか?」
「これから食べようと思っています」
「エマエマさんは何を食べるつもりですか?」
「ミサキさんのヘルシーメニューを食べたいです」
「ヘルシーメニューを作るんですか?」
「はい、お願いしたいです」
「冷蔵庫の中身を見てから、どうするのかを決めます」
「ミサキさんのおいしいご飯を食べられることを、心から楽しみにしています」
エマエマの食事管理をまかされた。ミサキは重圧のかかる仕事に、耐えることはできるのだろうか。