441 出発の朝、直後(またまたフゥ視点)
アイナ様たちを見送った私たちは⋯
『さあ、これからもうひと仕事だな。山桜桃、春陽、もうひと頑張り頼むな。何しろ作ったもんほとんど持たせちまったからな。今度はみんなの朝食作るぞ!』
『『はい!お任せ下さい!』』
えええ?大変!休ませるって誓ったばかりなのに!本人たちも休むって言ってたわよね?
『あらあらまあまあ。やっぱり?そんなことだろうと思ったわ。私も手伝うわ。朝の魔法コントロールの練習にちょうどいいかも』
『あっ!私も手伝います!』
『おれも!手伝うよ!』
凛さんの後に私も慌てて続きます!クゥも。そして
『何言ってんだい。一食くらい私らがちょちょいと作るからゲンたちは休みな!』
『そうだよ!本当はろくすっぽ寝てないんだろ?』
『こんなにドワーフの女衆が揃ってんだよ?なんなら男どもにも手伝わせるからさ!』
ドワーフのおかみさんたちも名乗りを上げてくれました。頼もしい限りです!
『いや、今寝たら朝飯食い損ねそうだからな。食ってから寝るから大丈夫だよ』
『はい!それに今朝はサーヤちゃん達に約束した特製フレンチトーストとフルーツヨーグルトサラダを作らないといけないので!』
『昨夜何が食べたいか聞いて約束してたんです!ちなみにハクくん達は鶏肉が食べたいそうなので、鶏肉で何か作ろうかと思っています!』
ええ~?いつの間にそんな約束してたの?サーヤたちってば。
『ハク⋯』
ギン様もため息ついちゃってるし⋯
『あらあらまあまあ。サーヤったら、そんな約束してたのね。ごめんなさいね』
凛さんも仕方ないわね~って感じですね。
『仕方ないねぇ。じゃあ、みんなでチャチャッと作って早いとこ三人を休ませないとね』
『『はい!』』
おかみさんの言う通り!さあ、みんなでお家に戻り⋯あら?
『ねぇ、クゥ?リノ様は?』
『あれ?ほんとだ。いないな』
さっきまでいたはずのリノ様がいない。
みんながあたりをキョロキョロ探しているその頃⋯
『うふふふ⋯感じますわ。サーヤちゃんの気配、このお部屋から感じますわ』
すやすや眠るサーヤたちの部屋の前に忍び寄る変た⋯不審し⋯リノ様がひとり⋯
『うふふふ⋯うるさいアイナとニャーニャ、それに怖い医神様がお留守な今を逃す手はございませんわよね?』
完全に危ない人のセリフですよ。リノ様⋯
『さあ、可愛いサーヤちゃんの寝姿、ご開帳~ですわ』カチャっ
静かに扉を開く変た⋯リノ様。
細く開けた扉の隙間からベッドを覗くと
「ふへへ~もふもふ~♪むにゃむにゃ」スース~
お気に入りのタオルケットにくるまって気持ち良さそうに眠るサーヤと、ちびっこたちを確認した変態⋯
『いや~ん♡可愛いですわぁ!はぁはぁ。では、いざ添い寝をば⋯うふふふふ』
更に扉を開けサーヤに近づこうとする不審者⋯そこへ!
ピョンッ!
『え?』
サーヤの胸の上に突如現れたうさぎの編みぐるみ!ミア参上!
『来たな変態。結葉様の読み通り』
ニヤッと笑うその手には
『ミ、ミアさん?どうしてここに?そして、その手に握っている物はいったい?』
ミアの手には天井から伸びる細い糸。そう。絹さんの糸⋯
『ふふふ。サーヤには指一本触れさせはしない』グイッ
カランカランカランカラン♪
『え?え?え?ええ?』
ミアが引っ張った糸は部屋の外へ。そして部屋の外から屋敷の外へカランカランと音が響く⋯!
『皆の者であえーっ!曲者だーっ!』
ミアが叫ぶ!が、サーヤとちびっこたちはすやすや夢の中⋯そして外では
〖何?なんの音?〗
〖さ、さあ?〗
外にいる面々も戸惑う中⋯
きゅるる『うわ、ほんとに来た。結葉様の予言的中』
『うふふふ。やっぱりぃ。もう仕方ないわねぇ、リノちゃんたらぁ。そんな悪い子にはぁ~、えいっ!』
絹さんと結葉様?何か知ってるの?それに、えいって?
『きゃーーーっ』
えええ?何?何?
きゅるる『心配ない。サーヤたちの部屋、行く』
『そうねぇ。行きましょうかぁ』
え?え?サーヤたちの部屋?何かあったの?
みんなでサーヤたちの部屋へ走ると
『サーヤ!は?』
〖サーヤ!え?〗
真っ先に部屋に到着したゲンさんとジーニ様が立ち止まって間抜けな声を上げてます。何があったの?と、みんなで覗きこむと
〖⋯なに?これ?〗
『芋虫?でけぇな』
『あらあらまあまあ、ゲンさん、それボケよね?』
みんなの目線、その先には
ええ?なんか、うねうねぐねぐねしてるぅ。不気味~気持ち悪い~
『ムームームームー』
え?声?よく見たらこれ蔦?ぐるぐる巻きにされたこの謎イモムシは、もしかして?
きゅるる『リノ様、ほんとに来るとは』
『だから言ったでしょう?まったくリノちゃんたらぁ、仕方ない子ねぇ』
そうそれは、リノ様⋯
結葉様が『えいっ』と言ったその直後
シュルシュルシュルシュル
『ええ?きゃーーーっ』
結葉様のくれたバングルから蔦が!あっという間にイモムシの出来上がり。
〖これだったのね⋯〗ぼそっ
〖これですね⋯〗こそっ
神様母娘がまた何か?
きゅるる『結葉様、きっとリノ様がやらかすから、罠作り手伝ってって言われた。だから、前にゲンさんに聞いた鳴子作ってみた。上手くいった?』
絹さんが自分の作った罠の出来をゲンさんに確認してます。
『あ、ああ。上手くいったぞ』
呆然と答えるゲンさん。
鳴子ってこのカランカラン鳴ってるやつ?ドワーフさん達が興味深げに糸引っ張り続けてるけど⋯
きゅるる『そう。良かった』うんうん
絹さん、すごい満足気
『うふふ。だってぇ、リノちゃんたら欲望に忠実なんだものぉ。お目付け役がいなくなったらぁ、絶対やらかすと思ったのよねぇ~。だ・か・ら、リノちゃんのには拘束出来る機能を付けておいたのよぉ~。大・正・解♪』
ああ~それじゃあ、さっきのニヤッの正体は
〖これね〗
〖これですね〗
〖〖えげつないわね〗〗
ジーニ様とシア様はすごいジト目です。
『え~?でも、正解だったでしょう?サーヤの貞操は守れたしぃ』
貞操って⋯それはそうかもしれないけど
『ところでミアはそこで何してんだ?』
『あらあらまあまあ。今のサーヤはミアに襲われてるみたいね?』
ゲンさんたちはミアちゃんに興味を移したようです。
『ミア、鳴子を鳴らすという第一の使命果たした』
『うん?』
『そうなの?』
ゲンさんと凛さんに頷くミアちゃん。
『だから今は第二の使命、サーヤの貞操を守るを実行している』
大真面目に答えるミアちゃん。だけど、今のミアちゃんはサーヤの
『いや、それミアに奪われてるだろ?』
『そうねぇ。サーヤの唇はミアに盗まれてるわね』
そう。ミアちゃんは今はサーヤの口を覆うようにサーヤの顔に張り付いているのです。
『大事な使命』
そして、やっぱりすごく真面目に答えてます。
『そうか⋯』
『でもまあ、もういいんじゃないかしらぁ?』
『分かった』
うん、まあ、サーヤを守ってくれてありがとう?でいいのかしらね??
『それにしてもなんで起きないんだろね?』
『流石の俺でも起きそうなのにな』
親方夫婦、同感です。サーヤもちびっこたちも呑気に寝たまま⋯あの鳴子、かなり大きな音だったのに。ある意味すごいわ⋯
『うふふ。いいじゃない?それじゃ誰かその塊運び出してねぇ』
あっ忘れてました。
『ムームームームー!』
まあ、自業自得ですね。でも、これを運び出す?
『誰が運ぶんだよ。俺嫌だぞ?』
『私だって嫌だよ』
あ~あ、みんな嫌がってる。親方たち後ずさってるし。私もだけど
「ふへへ~おいちいにぇ~。むにゃむにゃ」スース~
サーヤ、何食べてるの?平和ね⋯
「うへへ~」