285章 突然の電話
ミサキは焼きそばを調理する。調理の感覚を覚えていたのか、スムーズに作ることができた。
「エマエマさん、焼きそばできました」
エマエマはできたてほやほやの焼きそばに、瞳をウルウルとさせていた。
「ミサキさんの焼きそばを、食べてみたかったです」
エマエマは箸を持つと、焼きそばを豪快に口の中に運んでいく。あまりに豪快に食べるので、
おなかすいているのかなと思った。
「グレイトです。とってもおいしいです」
エマエマは親指を立てる。
ミサキのスマートフォンが鳴らされる。誰なのかなと思っていると、シノブからだった。
「シノブちゃん、どうしたの?」
シノブはいつもよりも、慌てたような声を発する。
「明日に出勤できないでしょうか。マイさんが猫アレルギーを発症したらしく、明日はお休みになりました」
猫と接するだけで、仕事をできなくなる。ミサキの思っている以上に。マイのハンデは大きいのかなと思った。
電話を受けたことで、他のメンバーを補充していたのを知った。ミサキは働き続けているのに、あたりまえの事実に目を向けてこなかった。
「わかった。明日に出社すればいいんだね」
「ミサキさん、ありがとうございます」
シノブはスマートフォンの電源をオフにする。
「ミサキさん、どうかしたんですか?」
「焼きそば店が人員不足らしく、出社することになりました」
エマエマは落胆を隠さなかった。
「そうですか・・・・・・」
「エマエマさんは、しっかりと体を休めてください」
「わかりました」
エマエマは慢性的な休養不足。24時間睡眠をとっても、回復させるのは難しいと思われる。
「ミサキさん、明日はデュエットしたいです。一緒に歌っていただけないでしょうか?」
「私でいいんですか?」
音痴に合わせるのは、大きなマイナスになりかねない。今後のためにも、素人とのデュエットはやめたほうがいいのではなかろうか。
「ミサキさんとデュエットした曲を、録音するように指示されています。約束を守らなかった場合、マネージャーから檄を飛ばされてしまいます」
アイスクリーム、水着の次は歌手デビュー。腹ペコ少女の仕事内容は、どんどんスケールが大きくなっている。