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湖への乗馬

わたくしの邪気のない微笑みが効いたのか、乗馬の約束は、それから一週間もしないうちに叶えられる事になりました。

わたくしが乗馬を強請ったのは、何もお馬さんにどうしても乗りたかったからではありません。勿論、わたくしの可愛いビッツは綺麗な牝馬ですけど、今回の目的は私の姿を、湖に社交にいらした皆様に印象付ける事にありました。


わたくしは何気ない風のお洒落を、念入りにしました。何なら異国から取り寄せて貰った、キラキラする白粉を瞼の下にほんのり載せました。耳たぶと頬には同じ色でやっぱりほんのり紅を入れて、まるで紅潮しているかの様なお化粧をしてますわ。

ハーフアップした髪には髪と同じ長さになるように、長い赤い細いシルクのリボンを垂らしてます。ドレスは乗馬用に軽快なデザインですが、白と水色のストライプ柄の甘い爽やかさ満点なものです。イメージとしてはトリコロールですわね。赤をピリっと効かせてみました。

パティは私の指示にいちいち感嘆してましたけれど、それもしょうがないのですわ。これは全部、前世の知識を使ってるんですもの。

パティにはお姉様方にお聞きしたと言ってありますが、いつまで『お姉様方』が通用するのか、一抹の不安を感じますわ…。本当にアドバイザー的な人物をゲットする必要がありそうですわ。



軽快に階段を降りて行くと、ホールで待っていたアンソニーお兄様とマイケルお兄様はお口をあんぐりと開けていましたわ。いつもより胸元は空いて谷間が見えますし、もちろん家の中ではレースを立たせてほとんど見えない様にしていますけど。何気ない風ですが、男心をくすぐる完璧な装いですもの。


「…何だか、今日のマリーは輝いて見えるね…。」

あら、マイケルお兄様はお世辞が言えたんですのね?それにわたくしはラメメイクで実際にキラキラしてるんですの。正解ですわ。

「ああ、本当に。いつの間にか僕たちの可愛い妖精は、女神へと変身しそうな感じだね。」

アンソニーお兄様、そつのないお兄様もいつもながら素敵ですわ。今日はわたくし、お二人にとっておきのプレゼントを用意してますの。湖で驚かれるかしら?とっても楽しみだわ。わたくしは内心こんなことを考えながら、にっこり微笑んで言いましたわ。

「アンソニーお兄様、マイケルお兄様、今日はわたくしの我儘を聞いてくださってありがとうございます。お兄様方が素敵なお姉様方に占有される前に、小さな妹として独り占めしてみたかったんですわ。」

わたくしのこの言葉に、お兄様方はすっかりニヤけてしまわれました。あらら、単純ですわね?


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