278章 ホノカのお願い
ホノカは深々と頭を下げる。
「エマエマさんの歌を、生で聴かせていただけないでしょうか?」
ホノカにとっては、エマエマの曲を生で聴ける最初で最後のチャンス。今回を逃してしまうと、一度も聞けずに終わる可能性が高い。
「喉を酷使できませんので、一曲にします。それでよろしいですか?」
喉は歌手にとって命の次に重要なもの。大切にしたい思いは、はっきりと伝わってきた。
「はい。お願いします。エマエマさんに、どれくらいのお金を払えばいいですか?」
リクエストをした場合、10万ペソはくだらないといわれている。超一流の音楽を聴くためには、多額の金銭を必要とする。
「普段なら10万ペソ以上をいただきますけど、今回は無料でいいですよ」
「エマエマさん、ありがとうございます」
ユタカは生演奏に、大いに興奮していた。
「歌を聴ける。とっても嬉しい」
マイはハイテンションモードに突入する。
「ヤッホー、とっても嬉しい」
シラセは胸に手を当てる。
「エマエマさんの歌を、胸に焼き付けたい」
フユコはアホ毛をくねくねさせる。
「音楽の神様に感謝なのだ」
ミサキ、シノブは5人と比べると、落ち着いていた。3回目ということもあって、ちょっとだけ
慣れてしまったのかもしれない。どんなに素晴らしいものであっても、回数を重ねるごとに感動は薄くなる。そのことをとっても残念に思った。