第六話 ペア決定、小隊編成
登録が終わった入学式会場に再び軍監の声が響く。
「これより一緒に教練を行うペアを決定する。なるべく男女で気の合う者同士で、二人一組になるように。」
軍監の声に会場がざわめく。
キャスパー男爵がハルフォード子爵に話し掛けた。
「ふむ。やはり貴族は貴族同士で組むべきだな。」
「では、やはり・・・？」
「うむ。」
貴族組では、貴族の子弟達がナナイに次から次へと群がって、自分と組むように申し込んでいた。
次々と来る申込者に対してナナイは返答せず、押されるようにジリジリと少しづつ後ろへ後退(あとずさ)り、とうとう式典会場の中央あたりまでナナイは来てしまっていた。
「下がれ、下がれ！」
「帝国最大最高位の貴族ルードシュタット侯爵令嬢の相手は、この私しかおらん！」
キャスパー男爵が取り巻き達を引き連れ、ナナイに迫る貴族の子弟達を押し退けて前に出てきた。
キャスパー男爵は胸に手を当て、恭(うやうや)しくナナイに一礼すると、自分と組むように申し込んだ。
「ささ、ルードシュタット侯爵令嬢。帝国貴族たる、この私とペアを組みましょう。」
ナナイはキャスパー男爵から顔を背け、背中を向けた。
そして、救いを求めるように平民組のラインハルトの方を見た。
ラインハルトとナナイの目線が合った。
平民組からラインハルトがナナイの前に歩み出る。
ちょうど貴族組と平民組の間となる空間、式典会場の中央で二人は向き合った。
ラインハルトは『騎士の古典的典礼』に則り、片膝を着き、掌を上に右手を差し伸べてナナイを見つめる。
ひと呼吸置いて、そしてナナイに言った。
「ナナイ・ルードシュタット侯爵令嬢、よろしければ私とペアを組んで頂けますか？」
士官学校の全学生、教官などが見ている前での『騎士の古典的典礼』に則ったラインハルトからの申込みにナナイの顔は、照れ臭さと恥ずかしさで、みるみる赤くなる。
(ラインハルトが自分を選んでくれた。）
ナナイは嬉しかった。
「喜んで。」
ナナイは、そう返事をすると、差し出されたラインハルトの掌の上に自分の右手を置いた。
おとぎ話にある騎士物語のワンシーンのような状況に、周囲から歓声と感嘆の声が湧き上がる。
ナナイは立ち上がったラインハルトと腕を組み、うっとりとその顔を見上げた。
そして、ラインハルトにエスコートされる形で、二人は平民組の仲間のところへ歩いていった。
ジカイラがティナに話し掛ける。
「やるじゃないか！ お前の兄貴！！ さすが、オレが見込んだ男だぜ！！」
「当たり前よ！ 私のお兄ちゃんだもん！！」
ハリッシュは「やれやれ」といった感じでため息を付いた。
「私達も、それぞれペアを組むとしましょう。」
クリシュナは、とても感動した様子で胸の前で手を組み、目を輝かせてラインハルトとナナイのやり取りを見ていた。
ケニーも興奮冷めやらぬ様子で話す。
、
「ヒナちゃん、ラインさん達を見た？？ スゲーカッコいい！！」
「まるでプロポーズね！ 素敵！！ ああ、私もあんな風に告白されてみたい！！」
キャスパー男爵は式典会場の中央で、ナナイにペアを申し込んだポーズで固まったまま、怒りと屈辱でプルプル震えていた。
ハルフォード子爵が気不味そうに話しかける。
「・・・あの、キャスパー男爵。侯爵令嬢は、あの平民と行ってしまいましたが・・・。」
「おのれ
「まぁ、『二度あることは三度ある』とも言いますし。」
「うるさい！！」
怒り狂ったキャスパー男爵は、ようやくその場を後にし、ハルフォード子爵などの取り巻きたちもその後に続いた。
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入学式会場に再び軍監の声が響く。
「時間だ。次にペア四組で一個小隊を編成する。なるべく同じ寮で組むように。組めなかった者はこちらで強制的に編成する。」
ラインハルトが皆に話す。
「小隊は、寮の七人にナナイを加えた八人。これで決まりだね。」
提案に異論は無く、すぐにまとまった。ラインハルトは、直ぐに係員に小隊編成を報告した。
係員が答える。
「一番最初か。『01小隊』っと。小隊長は報告者の君だ。」
小隊長はラインハルトがやることになった。
軍監からの解散指示が発せられる。
「小隊編成が終わった者は解散。明日までに小隊旗のデザインと通称(コールサイン)を決めておくこと。明朝、報告するように。」
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小隊の編成は以下のとおりとなった。
01小隊
隊長：ラインハルト
副隊長：ナナイ
第一分隊
ラインハルト：
ナナイ：
第二分隊
ジカイラ：
ティナ：
第三分隊
ハリッシュ：
クリシュナ：
第四分隊
ヒナ：
ケニー：
