246章 緊張
19時45分にコンサート会場にやってきた。
観客数は15人くらい。少数精鋭のコンサートに斬新さを感じた。コンサートは、大規模で行うイメージが強い。
マイ、シラセはお腹をおさえる。
「トイレに行ってくるね」
シノブは二人を気遣った。
「無理はしないでくださいね」
マイ、シラセはトイレに向かった。コンサート会場からすぐなので、20時までに戻ってくるのは十分に可能だ。
ミサキは大量に食べたけど、おなかに痛みはなかった。腹ペコガールの胃袋は、通常の人間よりもたくさんの食べ物を詰められる。
シノブはゆっくりと立ち上がる。
「外の空気を吸ってきます」
「シノブちゃん・・・・・・」
シノブの顔はガチコチになっていた。
「大物の歌を聴けるからか、大いに緊張しているようです」
ミサキは体を起こすと、緊張している女性の背中を撫でる。
「シノブちゃん、心を落ち着けよう」
「ミサキさん、ありがとうございます」
ユタカはいつにもなく、そわそわとしていた。
「ユタカちゃん、どうかしたの?」
「心がざわめいている」
ズービトル、タウダルヒカ、エマエマは、他人の心を狂わせる。凡人、超一流の違いをまざまざと見せつけられた。
フユコは特に緊張していなかった。
「フユコちゃんは、緊張していないね」
フユコはアホ毛をくねくねする。
「音楽に興味を持っていないので、平常心でいられるのだ」
興味を持っていなければ、心がざわめくことはない。興味を持っていないことは、ある意味で幸せなのかなと思った。
「ミサキさんは、緊張しないんですか?」
ミサキは自分の胸に、そっと手を当てる。
「私は緊張していないみたい」
「ミサキさんは、心臓に毛が生えているんですね」
「そうかもしれないね」
CM出演、テレビ出演などによって、メンタルはおおいに鍛えられた。よほどのことがない限り、動揺することはなさそうだ。