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6話 これが僕の考えた対応策だ

あれから1時間ほどすると、父、母、兄2人が帰還したので、僕は父の執務室にて皆に僕のギフトを伝えると、全員が喜んでいいのか微妙な表情となる。新規ギフトのため、どんな効果を及ぼすのか不明だし、名称が[壁]とシンプルだからだ。最後に、祝福の儀に起きたことを伝えると、家族全員が司祭様の不用意な発言に憤る。

「司祭は、何を考えている!! ギフトの名称だけでなく、【神の死らせ】を口に出すとは!?」

父-ミゲルは、王都の治安を維持する警ら隊に所属しており、6班から構成されている部隊の一つ、3班の班長を任せられている。熱血漢で曲がったことが大嫌いな性格のため、司祭の行為に相当な怒りを蓄積させている。父だけでなく、顔色を悪くした母や兄たちの様子から察するに、皆はこの名称について知っているようだ。

「はい。僕は1ヶ月以内に、大きな不幸に遭遇します」

母-サイミアは、おっとりと温和な性格のためか、その話を聞いた時点で顔色が悪くなっていて、今でも倒れそうなほどだから、長兄のフレッド兄さんが倒れないよう受け止めている。16歳のフレッド兄さんは、去年学院を卒業し、今年騎士として正式に採用されたばかりだ。婚約者だっているし、フィルドリア家の跡継ぎである以上、僕の不幸に巻き込むわけにはいかない。

「マグヌスさんに聞いたけど、100%起こる予知だから、居場所は関係ないし、どんな不幸が襲ってくるのか不明である以上、回避する方法もわからない」

「クロード、教会関連の不幸なのか?」

次兄で14歳のレイダム兄さん、学院の2年生、何故かいつも僕を敵視して突っかかってくる嫌な人だけど、今回ばかりは心配してくれている。

「多分ね」


さて、僕なりに考えた決断を皆に発表しようか。


「教会絡みである以上、今後のことで僕なりに考えたことがある。みんな、聞いてほしい」

部屋全体が、緊張感に包まれていく。マグヌスさんの話を聞いて共通しているのが、この知らせを受けた人の殆どが他者に事情を明かさず、1人だけで抱え込み解決させようと動いた結果失敗してしまい、死後の解析により発覚することで、大迷惑が家族に降りかかるというものだ。

だから、僕はこれを逆手に取ることにした。

・フィルドリア家から一時的に出て行く。
・[神の死らせ]が消滅するまで、家に戻るつもりはない
・その間、冒険者として生活する
・冒険者登録の際、大勢いる受付付近にて全てを打ち明ける
・その上で、冒険者として強くなっていく

1人で抱え込むからいけないんだ。だったら、今後知り合う人々全員に、【神の死らせ】について打ち明ければいい。訓練学校の方も、休む理由を全て打ち明ければ、平民にも貴族にも僕の評判が伝わり、誰も寄り付いてこないはずだ。これで僕に近づいてきて不幸に巻き込まれたとしても、それは自業自得になり、家族にも迷惑は掛からない。教会側も僕の噂を聞くことで、何か大きなイベントを催す時でも警戒を緩めないだろう。

「これが、僕の考えた対策です」

全員が、黙ったままだ。

「クロード、お前の考えは理解した。……が、私は反対だ。お前は12歳で半人前、私たちを頼りなさい」

「私も理解したわ。ミゲルと同じ、ここを離れることに反対よ。教会絡みなら、私たちが今日参加した司祭様と話し合ってくれば、それで解決するかもしれないわ」

父さんと母さんは反対、兄さんたちは?
僕は、フレッド兄さんを見る。

「俺は賛成だよ。下手に山に引き篭もるより、全てを打ち明け冒険者として行動していく方が、こちらも情報を掴みやすいからね。クロードが我が家を離れている間に、父さんたちが教会関係者と話し合いをすればいい」

レイダム兄さんはフレッド兄さんと違い、暗くてねちっこい性格だから、何を言ってくるのか不安しかない。

「……いいんじゃない。家族を巻き込ませたくない、その考えは立派だと思うよ。そもそも、ここにいて不幸が起きた場合、最悪フィルドリア子爵家が崩壊する。父さんも母さんも、息子の命を重視するのもわかるけど、家のことも考えなよ」

褒められるとは思わなかった、正直意外だ。
両親は子供、兄たちは家のことを考えている。

その後、父さんと母さんは僕たちの説得により、僕を一時的に追い出す案に賛成してくれた。訓練学校の方にも、明日のうちに連絡し、僕自身が明後日に学校へ出向き、クラスメイトたちに事情を説明して、休学届を提出する。

それが終われば、僕は家を出て行くことになる。

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