223章 社員旅行
ミサキ、シノブ、マイ、ユタカ、シラセ、フユコの6人で社員旅行にやってきた。
社員旅行の場所に選んだのは友達駅。名店、スポット満載なので、ぴったりの場所だと思った。
ソフトクリーム店の前には、大勢の客が並んでいた。ソフトクリームにありつくために、3~4時間くらいは待つことになりそうだ。
たこ焼き店の前にも、大勢の客の列ができていた。こちらを食べたいなら、4~5時間くらいは
待たなくてはならない。
ユタカの視線はソフトクリーム店に向けられる。
「ソフトクリーム店はすごい人数だね」
シラセは人数の多さに、唖然としていた。
「ソフトクリームを食べるために、ここまで待つのは異常だよ」
フユコはアホ毛センサーを発動させる。
「ソフトクリームはおいしいといっている。食べたい、食べたい、食べたいよ」
仕事のときはしっかりしているけど、プライベートはまったく異なる。フユコを見ていると、そのように思えてしまった。
ソフトクリームを一度だけ食べたことがある。牛乳のブレンドなどにこだわっているのか、他店よりも圧倒的においしかった。
フユコは我慢できなくなったのか、ソフトクリームの列に並ぼうとする。シノブは両手を使用して、それを制した。
「フユコちゃん、ソフトクリームは次回にしましょう」
フユコはがっくりとうなだれる。ソフトクリームに対する思いは、人一倍強いようだ。
ユタカはたこ焼き店を見つめていた。
「たこ焼き店もすごい人気だね。ソフトクリーム店に負けてないよ」
シラセはこくこくと頷いた。
「そうだね。たこ焼き店もすごい人気だね」
フユコのアホ毛センサーを確認。ソフトクリームのときは動いていたけど、たこ焼きには全く動かなかった。こちらには興味を持っていないのが、はっきりと伝わってきた。
マイはいつの間にか、ハイテンションモードに突入していた。
「ミサキさん、高級寿司をおごって・・・・・・ふにゃふ・・・・・・」
シノブはずうずうしい女性の、ほっぺたをつねった。顔のゆがみ具合からして、かなりの強さであると思われる。
「マイさん、ずうずうしいですよ。高級寿司を食べたいなら、自分のお金で食べてくださいね」
マイのハイテンションモードは、アオイ、ツカサと大差なかった。人間は本音を漏らすと、同じようになるのかな。
シラセは大きな溜息をつく。
「高級寿司を食べたいなら、自分のお金で食べなさい」
ユタカは高級寿司店に視線を送っている。本音はいわないものの、高級寿司にありつきたいと思っている。
「みんなで高級寿司を食べに行こう。予算は1人1000ペソまでだよ」
マイは高級寿司を食べられることを知って、大量の涎をたらしていた。
「ミサキちゃん、ありがとう」
ユタカは満面の笑みを見せる。普段は物静かなので、別人かなと思ってしまった。
「高級寿司、高級寿司を食べられる」
シラセはため息をつく。
「ミサキちゃん、他人を甘やかすのはNGだよ」
「旅行をするにあたって、いろいろとお世話になるからいいよ」
旅行中に何度も迷惑をかける。1000ペソの高級寿司をおごるのは、義務かなと思っている。
「ミサキさん、いいんですか?」
シノブの質問に、満面の笑みを浮かべた。
「うん。いいよ」
「お金は問題ないですか?」
「旅行のために、大金を持ってきた。高級寿司くらいでは、びくともしないよ」
旅行にやってくるまでに、4件の仕事を引き受ける。妖精の仕送りを含めると、稼ぎは2000万
ペソを超えた。1人前1000ペソは、子供のお駄賃レベルである。
マイ、ユタカは高級寿司店に向かっていく。その様子を見ていたフユコは、
「フユコはソフトクリームを食べたいです」
といった。彼女は高級寿司よりも、ソフトクリームを食べたいようだ。
「フユコさん、高級寿司屋に行きましょう」
シノブの言葉に対しても、首を縦に振ることはなかった。
「ソフトクリームを食べたいです」
ソフトクリームに対する執念はすごい。どんなに説得されたとしても、心は動くことはなさそ
うだ。
「ミサキさん、シラセさん、高級寿司店に行ってください。私たちはソフトクリームの列に並びます」
「シノブさん・・・・・・」
「フユコさんの願いをかなえてあげたいです」
店長として、犠牲になろうとする。シノブの姿勢を見ていると、人間としてのすばらしさを感じた。
ミサキ、シラセが高級寿司店に向かっていると、シノブ、フユコは後ろからついてきた。
「シノブちゃん、フユコちゃん、どうしたの?」
フユコは小さな声で呟く。
「二人きりは寂しいので、高級寿司を食べたい」
フユコのアホ毛センサーは、高級寿司店に向かっていた。わずかな時間のうちに、気持ちを完全に切り替えるのはすごい。
6人は店前に集合したあと、高級寿司店に入った。