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「髪をちゃんと乾かしましょうね、じゃないと風邪を引いちゃうわ」

妻がそう言って俺を見る、俺は頷くと子供の頭に温風を送った。

「!!」

子供は温かい風にびっくりして俺の手を凝視する。

「これか?これは魔法だ。魔法で温かい風を出しているんだよ」

子供は不思議そうに風が出る俺の手のひらを見つめ続けていた。


風呂に入り新しい服にも着替えさっぱりとすると子供の腹がお腹が空いたと鳴り出した。

「そうだな、次は飯にしよう。朝ごはんだ!俺の奥さんの飯は美味いぞー知ってるよな?」

俺は頷いている坊主を抱き上げると部屋を移動した。

部屋には温かいご飯が並び美味しそうな匂いが立ち込めている。

「うん、今日も食欲のわく美味そうな匂いだなぁ~」

昨日の夜に新しく作っておいた、高めの椅子に子供を座らせると、自分もいつもの定位置に座る。

すると妻がご飯と味噌汁を持ってきてくれた。

「はい、どうぞ。君もたくさん食べてね」

子供の前にも置くと戸惑ったようにキョロキョロと周りを見ていた。

「どうした?」

俺が聞いてみると

「ぼく…ここ…たべる?」

どうやら席で食べる事に戸惑っているようだった…

「ああ、ここで、一緒に、食べるんだ」

俺はゆっくりとここに居てもいいんだと教えるように言うと、子供は目をうるませて下を向いた。

「さぁ!ご飯が冷めちゃうわ、いただきましょう」

妻が手を叩いて笑顔を向ける。

「そうだな!じゃあいただきます!」

「いただきます」

俺が手を合わせて挨拶をするとそれに妻が続く。

子供がそれを見つめていると…

「いいか、ご飯を食べる時は家族みんなでだそして挨拶を必ずする事!」

「いたた…きます」

「ふふ…い・た・だ・き・ま・すよ」

妻がゆっくりと口にすると…

「いただきます…」

同じ様に手を合わせて頭を下げた。

「可愛いわぁ~」

その仕草に妻は目尻を下げていた。

三人での食事は楽しく俺と妻は言葉多めに食事をすませた。

食後のお茶を飲みながら息をつくと、妻が子供に牛乳を持ってくる。

「どうだ坊主?美味かったか」

俺はコクコクと牛乳を美味しそうに飲んでる姿を見ながら聞く。

子供は口に白い髭を付けながらこくんと頷いた。

「あなた…坊主って、そう言えば名前を聞いて無かったわね…お名前は?」

妻が聞くと、顔を伏せて何も答えない。

「俺はカズキって言うんだ、まぁじいちゃんでもいいぞ」

「私はナナミよ、カズキさんがおじいちゃんなら私はおばあちゃんね」

「カズキ…ナナミ…」

子供は名前を呼びながら二人を見る。

「ええそう。君は?」

ナナミがもう一度聞くと…ふるふると弱々しく首を振り…

「ない…」

「えっ…ないの?お母さんはなんて呼んでたの?」

「よばない…」

「そう…ごめんなさい」

ナナミは子供のそばによるとギュッと抱きしめた…。

「坊主の母ちゃんは何処にいるんだ?もし…そこに帰りたいなら送ってやるぞ」

カズキが寂しそうにしながらそう答えると子供は悲しそうに顔を歪めてカズキを見つめた。

「ぼく…いらない…すてる…」

綺麗になった服に涙が零れた…子供は、服を濡らしたことで慌てて涙を手で拭く!

ゴシゴシと擦ると目が赤くなってしまった…

カズキは子供の手を握りしめると

「いいんだ…泣きたきゃ泣け。服が汚れても濡れてもまた洗って乾かせばいいんだそんな事気にするな」

子供はカズキを見つめるとあっという間に涙で目の前が見えなくなる。

子供は久しぶりに声をだして大声で泣いた…。

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