192章 匙加減焼きそば
ミサキは厨房に戻ったあと、マイに頭を下げる。
「マイちゃん、焼きそばの作り方を教えてください」
「ミサキちゃんのやりたいように作るのがコンセプト。私たちは指導するつもりはないよ」
マイは冷蔵庫から、焼きそば、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、エビ、イカ、卵などを取り出す。いつもの焼きそばには、使用しない具材がふんだんにあった。
「肉を多めにしてもいいし、野菜をたっぷり入れるのもOKだよ。エビ、イカ、卵などを試してみるのもいいよ。たくさんの具材を使用して、オリジナル焼きそばを完成させてね。料理をスムーズにできるよう、野菜のカットだけはやっておいたよ」
記憶の糸を必死に辿っていく。焼きそばをうまく作るためには、調理の順番は非常に重要だ。
ミサキは火をつけたあと、油をフライパンに投入する。フライパンから油がはねないよう、少
量にした。
フライパンが温まったら、豚肉を入れた。生で食べられないため、しっかりと火を通していきたい。
肉をしっかりと加熱したら、キャベツをプラスする。こちらについては、しんなりとするまで炒めるようにしよう。
キャベツをいためたあとは、焼きそばを加熱する。程よく痛めることができたら、焼きそばソースを入れて完成だ。
焼きそばソースをかけると、香ばしい香りが広がった。最初にしては、うまくできたのではなかろうか。
「マイちゃん、完成したよ」
「わかった。お客様に持っていくね」
2度目の焼きそばを作っているときに、重大なミスをしていることに気づいた。本来は入れるべきもやしを入れ忘れているではないか。もやしの入っていない焼きそばは、欠陥商品そのものである。
マイは厨房に戻ってきた。
「マイちゃん、もやしを入れ忘れていたよ」
「ミサキちゃん、気にしなくてもいいよ。次々と焼きそばを作ってね」
「欠陥商品はお客様のクレームにつながるよ」
「そばを忘れるのはNGだけど、もやしくらいなら問題ないよ」
マイは全く動じていなかった。ポジティブな女性は、強心臓をも兼ね備えている。
「ミサキちゃん、エビ、イカなども積極的に使ってね」
「普段とは全然違うような・・・・・・」
「本日はオリジナル焼きそばデーだよ。いつもと同じものでは、つまらないじゃない」
「客離れが・・・・・・」
「ミサキちゃん、余計な心配をするよりも、焼きそばを作ることに集中しよう」
ミサキはフライパンに油をひく。心にモヤモヤがあるのか、前回よりも油の量は増えていた。