187章 体重が減ってしまった
ミサキは体重計に乗ったあと、大きな衝撃を受けることとなった。
「37.5キロしかないの!」
わずか1日で4キロの体重減。急激な体重の減少に対して、危機感を抱くことになった。何も食べていない人であっても、1日でここまで体重は減らない。腹ペコ少女は常人では考えられないような、特殊な体をしている。
体重を戻すために、本日の摂取目標を35000キロカロリーに設定。たんまりと食事をとって、ふっくらとした体を作っていきたい。
7時になると、おなかはギュルルとなった。
「おなかすいた・・・・・・」
ミサキはチャーハン20人前、とんこつラーメン10人前、酢豚20人前、焼豚15人前を食べようと思った。食事量を増やすことによって、体重を42キロに近づけていこう。
シノブ、マイは朝食の量に対して、大きな驚きを見せていた。
「ミサキちゃん、朝からそんなに食べるの?」
ミサキは小さく頷く。
「昨日の仕事をしたことで、4キロ以上も減ってしまった。42キロをキープするためには、これ
くらいは食べる必要がありそう」
「あんなに食べていたのに、1日で4キロも痩せたの?」
「うん。そうみたい」
マイは確認を取りたいのか、ミサキのおなかに手を当てた。
「もともと細かった体は、さらに細くなってしまっている。人間では到底考えられない、体の細さだよ」
「マイちゃん、ご飯を食べていい?」
マイは何を思ったのか、慌てたように手を離す。
「ミサキちゃん、ごめんね」
ご飯に手を付けようとする前に、シノブに声をかけられた。
「汗を流したいから、シャワーを借りてもいい?」
「どうぞ、使っていいよ」
シノブはシャワー室に向かっていく。
チャーハンを一気にかきこんでいく。普段と比べると、1.5~2倍のスピードだった。
マイはチャーハンを爆食いする女性の前に、水のたっぷり入ったコップを10杯分置く。気の利いた行動に対して、彼女の人間の良さを感じた。
「ミサキちゃん、お水だよ」
目の前に置かれた水を、一気に喉に流し込む。潤いを得たことで、とっても幸せな気分になれた。
「マイちゃん、迷惑をかけてばかりだね」
仕事のアシスタントというより、介護をさせたみたいだ。
「ミサキちゃんは迷惑をかけているかもしれないけど、それ以上の恩恵をもたらしている。メリ
ットからすれば、デメリットは微々たるものだよ」
「そんなものかな?」
「ミサキちゃんは一人で、焼きそば店の売り上げの98パーセントを叩き出している。ミサキちゃんのおかげで、商売繁盛しているのはれっきとした事実だよ」
サインと握手はすぐに終わるのに対し、焼きそばは調理をする時間を要する。無限に作り出すことは不可能だ。
「家のローンはたくさん残っているから、10万ペソは非常にありがたい。10万ペソの全額をローン返済に充てるつもりだよ」
家のローンという言葉を聞き、現実世界を思い浮かべる。あちらの世界においても、ローンを返している大人はたくさんいる。
「ミサキちゃんの相場は、すさまじいね。100万ペソと聞いたときは、信じられない思いでいっぱいだった」
「相場は現時点であって、未来はまったくわからないよ。明日には暴落する可能性もある」
「そうだとしてもすごいよ。私は一秒たりとも、100万ペソの相場はつけてもらったことはない」
マイの当初の予定報酬は400ペソ。移動などを含めた場合、割に合わない仕事といえる。
ミサキはお腹を満たすために、とんこつラーメンを流し込んでいく。汁を含んでいるからか、とっても食べやすかった。
とんこつラーメンの次は、パイナップル入りの酢豚を口にする。賛否の別れる料理だけど、それなりに気にいっている。
焼き豚を食べ終えたあと、自販機に向かった。メインの食事だけではなく、フルーツなども食べたい気分だった。