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184章 報酬格差

 ミサキ、シノブ、マイは仕事を終えた。ミサキはヘロヘロ、シノブ、マイは元気そのものだった。腹ペコ少女とその他では、体力は明らかに異なる。

「ミサキさん、シノブさん、マイさん、ありがとうございました。お客に宣伝できる、とってもいい映像を取れました。シノブさん、マイさんは初出演とは思えないほど、とてもいい動きをしていました」

 シノブ、マイはアイドルとして活動していた。アイドル時代に培われた経験は、今回の撮影に大いに役立った。

「マイさん、シノブさんにも、きっちりとした報酬をお渡しします。今回の活躍を受けて、当初の400ペソから大幅に増額する予定です。詳細をお伝えすることはできないけど、1万ペソ以上になると思われます」

 8時間アシスタント+移動時間込みで、報酬はわずか400ペソ。主役に比べて、かなり軽く見られている。移動時間を労働に含めると、時給は焼きそば店とほぼ同じだ。

 シノブは予想していなかったのか、目の玉は飛び出しそうになった。

「1万ペソもいただけるんですか?」

 焼きそば店をフルタイムで働くと、1カ月で3200ペソくらい。今回の報酬は、焼きそば店の3ヵ月分となる。

 スタッフは小さく頷いた。

「息の合ったコンビネーションは、最高によかったです。遊園地のいいところを、たくさんの人に伝えられると思います」

 シノブ、マイは一緒に働いている時間は長い。阿吽の呼吸で動けるようになっているのかもしれない。

 ミサキはスタッフに対して、

「シノブちゃん、マイちゃんのおかげで仕事できました。私の給料の一部を、シノブちゃん、マイちゃんに分けてあげてください」

 と伝えると、スタッフは小さく頷いた。

「ミサキさん、いいんですか?」

「はい。シノブちゃん、マイちゃんの取り分を増やしてください。金額は給料の10パーセントを目安にします」

 アシスタントのおかげで、仕事を無事に終えられた。彼女たちの貢献度を考えると、10パーセントは高い金額ではない。

「わかりました。ミサキさんの給料を減らして、シノブさん、マイさんの取り分を増やします」

 焼きそば店以外においても、いろいろとお世話になっている。取り分を増やすことによって、彼女たちの努力に報いてあげたい。

「ちなみに給料はどれくらいですか?」

 女性は給料の額を確認した。

「ミサキさんの報酬は、100万ペソと書かれています。1回で支払うのではなく、100回に分けて支給されるみたいです」

 ミサキ、シノブ、マイは裏返った声を同時に発した。

「え?」

 ミサキは100万ペソで、シノブとマイは400ペソ。立場は異なるとはいっても、2500倍の差がついているとは思わなかった。この金額差では、シノブ、マイは報われない。

「ミサキさんを出演させるなら、100万ペソは安すぎるくらいです。アイスクリームは5000万ペソ、テレビ局は1億ペソの経常利益を生み出したといわれています。アイドル業界については、ミサキさんがいなければつぶれていました」

 妖精から同じようなことを聞かされた。ミサキが仕事をすることによって、社会を大きく動かしている。

「ミサキさんの活躍によって、相場が大きく上がっていくでしょう。焼きそば店だけでなく、テレビ出演にも力を入れてみてはいかがでしょうか?」

「私はいいです。焼きそば店を心から愛しています」

 女性は口に手を当てて、くすっと笑った。

「私はそれもいいかなと思います。本当に好きなことをできることで、幸せを感じることができます・・・・・・」 

 ミサキは大きく頷いた。お金では絶対に変えない幸せは、確かに存在している。

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