173章 一緒に泊まる
カラオケに参加したことで、大量のエネルギーを消耗。安泰だと思われたお腹は、ギュルルとなることとなった。
「おなかすいた」
ユタカは信じられなかったのか、目を大きく見開いた。
「焦がし味噌ラーメン20人前、餃子15人前、麻婆豆腐10人前を食べたのに、おなかすいたの?」
ミサキは小さく頷いた。
「うん。おなかすいた」
ホノカは優しい目線を向ける。ミサキと長くいたからか、動じることはなかった。
「ミサキちゃん、しっかりと食べようね」
「うん。そうする」
現在の時刻は8時40分。あと20分で何も食べられない体になる。エネルギーを摂取できるうちに、もらったおにぎりを食べる必要がある。
ミサキはおにぎりを手に取ると、豪快に口の中に入れていく。焦がし味噌ラーメン20人前、餃子15人前、麻婆豆腐10人前を食べた直後とは思えなかった。
15分足らずで、20個のおにぎりを完食。ミサキのおなかは、窮地を脱することができた。
おにぎりを食べたあとは、お茶でのどを潤す。水を入れておくことで、喉の渇きを緩和できる。
「明日の朝7時までは、これでいけるね」
時計の時刻は8時59分を指している。あと一分後には、何も消化できない体に変わる。
ホノカは右手に、パン残りを持っていた。
「ミサキちゃん、これを食べよう」
ミサキは右手で、ホノカを制した。
「夜の9時から、朝の7時までは食べ物を受け付けない体になるの」
水を飲もうとしたものの、体の中に入っていかなかった。胃袋は仕事をする時間、休みを取る時間をはっきりと分けている。
「ミサキちゃんは、特殊な体をしているみたいだね」
「うん。普通の人とは異なる体をしているよ」
おなかのすかない時間帯は、ゆったりと過ごすことができる。腹ペコ少女にとって、完全なリラックスタイムとなる。
夜も暗くなっており、これから帰るのは厳しいと思われる。ミサキは二人に対して、
「ホノカちゃん、ユタカちゃん、家に泊まっていく?」
と伝える。ホノカ、ユタカは瞳をきらめかせていた。
「ミサキちゃんの家に泊まってみたい」
ユタカは嬉しかったのか、身を乗り出していた。普段は感情をあらわにしないだけに、別人みたいに感じられた
「私も宿泊したい」
「布団は別室にも用意されている。そちらで睡眠をとるといいよ」
一人暮らしにもかかわらず、複数分の布団が用意されている。豪邸という場所は、一般人とかけ離れた生活を送る。