172章 カラオケ終了
2時間に及ぶカラオケが終了。
ミサキ、ホノカは一度だけ、マイクを手に取った。二人は歌うつもりはなかったものの、ユタカの強い押しに負けてしまった。
ミサキは歌いなれていないこともあって、音程は完全にずれていた。初心者レベルはおろか、素人レベルにも達していなかった。カラオケマシーンに採点させたら、0点を下回るような気がする。
下手な歌を披露したあとに、慰めの拍手を送られる。ぱちぱちという音を聞くたび、みじめになっていくのを感じた。閉じこもる穴を用意されていたら、すぐに入りたいと思った。
ホノカはまずまずだった。上手というレベルに達していなかったものの、下手という印象も受けなかった。ミサキと比べると、歌の練習をしているのかなと思った。
ユタカは歌い過ぎたからか、喉を抑えていた。ホノカは喉を触っている、女性を気遣った。
「ユタカちゃん、喉の調子はどう?」
「ちょっと痛いだけだよ。気にするほどではないよ」
「ユタカちゃん、無理をしないようにね」
「ホノカちゃん・・・・・・」
ホノカは優しい手つきで、ユタカの背中をなでる。
「ホノカちゃん、ありがとう」
「ユタカちゃん、自分の体を大切にしてね」
ユタカはしんみりとした表情で、ホノカを見つめていた。
「ホノカちゃんは、とってもいいおかあさんになりそうだね」
「そうかな?」
「料理はとっても上手だし、他人を癒す力を持っている。おかあさんにぴったりだよ」
「そ、そうかな」
ホノカは照れているのか、顔を赤らめていた。ミサキはとってもかわいいと思えた。