171章 マイクはどこに?
ユタカはアニメの曲を熱唱する。マイクを手に取っている女性は、自分の世界観に突入していた。
ユタカが一曲を歌い終えると、ミサキ、ホノカは握手を送った。
「ユタカちゃん、とっても上手だったよ」
ユタカはおおいに照れていた。普段はボーイッシュな性格をしているので、意外な一面を見たような気がする。
ユタカは手に持っているマイクを、ホノカに渡そうとする。
「ホノカちゃんも熱唱してみない。ストレス解消になるよ」
ホノカはたじたじになっていた。
「人前で歌うのはとっても恥ずかしいよ。ミサキちゃん、代わりに歌ってよ」
話を突然ふられたので、ジタバタしてしまった。
「私は曲を知らないから、今回はお預けにしようかな」
ミサキは適当にごまかしたあと、ユタカにマイクを渡そうとする。人前で歌うシチュエーションは、絶対に避けたかった。
ユタカはマイクを受け取らず、ミサキの膝の上に乗せる。
「ミサキちゃんの歌を聞いてみたい」
「私はいいよ。人前で歌うのは得意じゃない」
「ミサキちゃんの声は、音楽にとってもマッチすると思う」
「そんなことはないよ」
ミサキ、ユタカの話は平行線をたどることとなった。ホノカはその様子を、静かに見つめていた。