148章 水着撮影の話
親子丼を食べていると、扉をノックされる音がした。
「ミサキさん、こんにちは」
家を訪ねてきたのは、22歳くらいの女性だった。眉と眉の間にある、小さなほくろがとっても印象的だった。
「シズカといいます。ミサキさんに、仕事をお願いしたいです」
ミサキの脳裏の中に、断食の悪夢がよみがえる。
「断食系であった場合は、すぐにお断りします」
「私たちの依頼は、水着のCM出演です。スクール水着を着用して、アヤメさんと出演してほしいです。大食い少女、トップアイドルのツーショットを流します」
予想していなかったこともあって、素っ頓狂な声を発する。
「私の水着姿?」
「そうです。ミサキさんの水着姿を取りたいです」
「水着姿を取られるのは、とっても恥ずかしいですね」
「水着撮影の仕事は明日です。シノブさんとお話しして、撮影OKの返事をもらってきました」
焼きそば店の勤務を楽しみにしていたので、落胆の色を隠せなかった。焼きそば店の従業員として、いろいろな客と接したい。
「撮影は明日ですか?」
「そうです。スケジュールの関係上、引き延ばすことはできません」
仕事を断るのは難しい状況なので、しぶしぶOKを出した。
「わかりました。水着撮影をさせていただきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「水着はどうすればいいんですか?」
「ミサキさんのスリーサイズをもとに、ピッタリな水着を準備します」
シズカは巻き尺を取り出す。ミサキのスリーサイズを測るのは、れっきとした事実だった。
「大変申し訳ないですけど、バスト、ウエスト、ヒップを調べさせていただきます」
女性は30秒ほどで、測定を終える。こんなに早く終えられるのは、慣れている証拠である。
「バスト80、ウエスト47、ヒップ77ですね。ミサキさんは細いと聞いていたけど、こちらの想像
以上でしたね。体の細さだけなら、アヤメさん、ココロさんに負けていません」
160センチ、41.5キロはあまりにも細すぎる。あと2~3キロくらいは、体重を増やした方がいい。
「肌の色についても、とっても素晴らしいです。同じ女性として、とっても憧れます」
シズカの視線は、あるところに向けられる。ミサキは恥ずかしさのあまり、その場所を手で覆ってしまった。