バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

147章 ホノカ、ナナの話

 焼きそばを食べ終えると、体だけでなく、心もリラックスできた。

「シノブちゃん、マイちゃん、ユタカちゃん、ありがとう」

「どういたしまして」

 ユタカは軽い瞬きをする。

「ホノカちゃん、ナナちゃんみたいな焼きそばを作れるようになりたい」 

「ホノカちゃん、ナナちゃんは焼きそばづくりが上手なの?」

「うん。スピードはゆっくりだったけど、大切に食材を扱っていた。そのこともあって、とっても優しい味をしていた」

 ホノカ、ナナの焼きそばを食べたことはない。どんな味の焼きそばを作るのだろうか。

「ホノカちゃん、ナナちゃんみたいな焼きそばを作りたい。お客様に対して、おいしい料理を届けたい」

「ユタカちゃん、これからも一緒にやっていこうね」

 マイの言葉に対して、ユタカははっきりと頷いた。

 ミサキは従業員として働いていた、ホノカ、ナナの近況を伝える。

「パン屋でホノカちゃんと会ったよ。環境にフィットしているのか、とっても楽しそうにしていた。ナナちゃんはスーパーで元気にやっているみたいだよ」

 マイは白い歯を見せる。

「二人は元気にやっているのか。それを聞いて、安心したよ」

 ユタカは一緒に勤務していなかったからか、これといった反応は見せなかった。

 シノブは表情を曇らせていた。

「私があることに気づかなかったら、二人はやめてしまった。店長として、非常に悔いが残っている」

「シノブちゃんはしっかりと・・・・・・」

 ユタカの言葉に対して、シノブは首を振った。彼女の首振りには、明確な意思が含まれていた。

「アオイちゃん、ツカサちゃんはストレス解消のために、ホノカちゃん、ナナちゃんをいじっていたみたいなの。二人はストレスをためたことで、元気を失ってしまった。アオイちゃん、ツカ
サちゃんをすぐに懲戒免職にすれば、こんなことにはならなかった」

 アオイ、ツカサの懲戒免職にしても、二人はいなくなっていたと思われる。のんびりとしている性格に、あの忙しさはマッチしていない。

「ホノカちゃん、ナナちゃんの退職金に、サイン報酬の大部分を割り振った。現状でできる、最大限の誠意を示した」

 マイは乱れた髪を整える。

「シノブちゃんは気にしなくてもいいよ。店長はすべてのことを、できるわけではないから」

 ユタカは小さく頷いた。

「そうだよ。シノブちゃんは何も悪くない」

「マイさん、ユタカさん」

「やめていった人のことを考えるよりも、これからのことを考えていこう」

 シノブは小刻みに頷いた。

「そうですね。これからのことを考えていきましょう」 

 人間はどんなことがあっても、未来に進んでいかなければならない。過去にしがみついていても、何のメリットもない。

しおり