バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第2話 エルフの里の守り人 リーファ

ガリ ガリ ガリ ムシャムシャ  ん?
口の中が変だ。
アケミが蹴り飛ばした何かは 石かと思ったけど石じゃない。
これは植物?
甘いいような。ニンニクの様な味がした。

「うま・・バリ うま・・体が・・熱い 熱い・・力がみなぎってきたぞ!」

口から一欠けらのニンニクを取り出してみると やっぱり 何かの球根のようだ。
これは貴重な食料になるに違いない。ニンニクをポケットにしまった。

そうだ。派手に転んだアケミに謝らないといけないと思い近づいてみると
アケミは頭を打ったのか フラフラとしながら体を起こした。
少しに焼けているようにも見えるが 脳しんとうでも起こしているのかもしれない。

「ぷはぁ~ ははは さっきはごめん 不可抗力なんだ ぷはぁ~」

はぁ~はぁ~ どうきが激しくて なんだ? 息が止まらないぞ
そしてアケミは 意識を失った。
もう 胸がどうとか言ってる場合じゃなかったので介抱するとしばらくして
意識を取り戻した。
しかも 話を聞いてみると資料館で台座が光ったかと思ったら気を失って
夢の中でニンニクの化け物が現れたらしい。

「それは 怖い夢だったな。起きられるか?ほら 手を貸すぞ」

アケミは手を伸ばし俺の手のひらにぬくもりを伝えてきた。
男の手を握るのが恥ずかしいのかもしれない。
ちょこんと指先を載せるように俺の手に平を掴むと顔には可愛いえくぼが浮かび
瞳はこちらを見ると思いきや やっぱり恥ずかしいのかナナメ左下に向けられていた。

アケミはやっぱり 可愛い。

世の男たちならば このぬくもりをおかずにして充実した学生生活を送ることが出来るだろう。
俺も もしナースたちに囲まれるという夢がなかったら清楚なアケミのとりこになって
この状況を楽しもうとしたに違いない。
俺たちは人を探して歩くことにした。
目撃者どころか人っ子一人いない。
何度も アケミの優しい言葉に励まされながら俺たちは歩いた。
ときどき後ろを振り返ると アケミはえくぼを作り笑顔を絶やさない。
何を考えているんだろう?
きっと 俺を励ます言葉を考えてくれているんだろうな。
なんて 優しい子なんだ。。。

歩き疲れて俺たちは休むことにした。
日も暮れてきておそらく野宿をすることになると思うけど歩いている途中から枯れ木などが
ちらほらと表れ始めこのまま進めば体を休める場所も見つかりそうだ。
あとちょっと・・
けど アケミはどうだろう。そうだ。

「なあ さっき食糧を拾ったんだけど食べないか?元気が出るぞ」
「え これはなに?球根の欠片みたいだけど 食べられるのかしら?」

俺は 一欠けらの球根をアケミに渡した。
アケミは 美味しそうに食べる。

「あ!!!!!!」
「あれ!!!!!」

あれ?
アケミが球根を飲み込んだ時に 電気が体を走ったような気がしたけれど
なんだ?
俺も疲れと脱水症状か何かで体に痺れが走ったのかもしれない。
食料も探さなければいけないけど 水も見つけなくちゃいけない。
日が暮れて来るにつれて 涼しくなると思っていたけど涼しさを通り越して
寒くなってきた。
洞窟のような場所を見つけないと野宿はできない。

寒い
寒い・・

「あれを見て!」
「何だあれは? 建物なのか?」

枯れ木に取り囲まれるように半球体の建物が見える。
どうやら村のようだ。
入り組んだ枯れ木を抜けて一番近くの一件目のドアをノックした。

ドンドン ドンドン

「道に迷ったんです。助けてください」

ドンドン ドンドン

「ドン!」
慌てていたせいなのか 力強くドアを叩きすぎたのか
ドアが開いた

ギ ギギギィィィィィ

キラン☆

銀色に光る金属とその先には弓
さらに 先には鋭い視線がこちらを睨んでいる。

「男!!私はエルフの里のリーフェ。お前はエルフの里と知ってここへ来たのだろう?答えろ」

シュ!
矢じりがホホをかすめた。
心臓がドキドキする。
体が熱くなり始め 何かがこみ上げてきた

「ぷはぁ~!!!」

※スキル:吊り橋効果を付与しました。

エルフのリーファは 片手で口を塞ぐように覆うと 右手を突き出した。
「くっさい~  ゲホ ゲホ・・・ 次は 外さない。ファイア・・ボール」

リーフェの手の平からは炎が上がり火球へと成長した。

「まって! 待ってください」
「アケミ!」

アケミが顔をのぞかせると リーフェは火球をかき消した。
いつの間にかに夜になっていたのだろうか。
月明かりがドアから入り リーファを照らした。
笑っている?

「女!?女がいるならいると早く言えばよかったのに、さあ そんなところに居たら寒い。
中に入るといい」


さっきまでの緊張感は何だったんだろう?
アケミを見るや否やリーファの表情は優しい顔付きになった。
温かいスープまでご馳走してくれて 旅の話を聞かせてほしいと言ってきた。

「ふふふ」
「ははは」

アケミとリーファの楽し気な声
突然砂漠に居たという話は物語に聞こえるようだ。
手から火球を出せる方がよほどファンタジーな気もするが人が瞬間移動する事はできないらしく
神話の世界の話らしい。

「長老に聞けば何かわかるかもしれない。でも 今は長老には会えない。捕まっている」
「捕まっているって 誰に?」

リーファは 俺を睨みつけた

「人間の・・男。明日も来るかもしれない。さあ 今日はもう寝るといい」

俺は夢を見た。
最初の夢はアケミが 極悪な性格の女の子だったらの世界の夢だった。。
そして もう一つの夢は球根がしゃべり出す夢。
目が覚めて枕を見ると手足の生えたタラコ唇のずんぐりとした眼をしている生物がこちらを見ていた。
そういう夢だ。
よく見るとかじられた後もありあの球根のようだ。

「われは球根マン。悪い球根じゃないよ。」
「それを言うなら悪いスライムだろ・・むにゃむにゃ・・」

「われには夢があったのだが、おなごの蹴りによって見事に砕かれてしもうた。
もう少し成長出来れば完全体になれたと思うと悔やまれる。
ところでお前には夢があるか?」
「夢?そんなの 医者になって ムフ ムフ フフフ むにゃむにゃ」

「人助けをしたいと申すか?」
「むにゃむにゃ・・」
「ワレの夢を託すのは お主かもしれぬ」

しおり