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308章 どんよりの理由

 ミライは覇気を失った、妹の肩に手をのせる。これを見ていると、姉妹に距離はあるように見えなかった。

「ハルキ、元気を出そう」

 ハルキは力のない声を発する。

「おねえちゃん」

 アカネは何があったのか、ミライに確認を取った。ハルキの姉なので、とっておきの情報を持っていると思われる。

「ミライさん、何かあったの?」

 ミライは話をする前に、大粒の涙を流す。ハルキだけでなく、ミライにも苦しい出来事だったことが伝わってきた。 

「巨大地震の発生によって、ペットは全滅してしまいました」

 人間だけを被害対象に考えていたので、ペットまで頭は回せなかった。ペットは人間ではないものの、立派な生き物である。

 ミライは落ち込んでいる女性を、一生懸命に鼓舞する。おねえちゃんとして、強い姿を見せようとしていた。

「ペットは新しく購入していこう」

「おねえちゃんの収入では、ペットショップを建て直すのは厳しいよ。ペットを仕入れるだけで、1000億ゴールドはかかると思う」

 ペットを仕入れるだけで、1000億ゴールドもかかるとは。ペット価格については、極端なインフレを起こしている。

「1000億ゴールドくらいなら、すぐに払える。ハルキは心配しなくていいよ」

 1滴の水を節約していた女性が、1000億ゴールドくらいという発言をする。金銭を得たことで、ミライの金銭感覚は大きく変わった。

「おねえちゃん、そんな大金を持っているの?」

「アカネさんの服のデザインをしたときに、1兆ゴールドの収入をもらえた。10パーセントほどを使えば、ペットショップを再建できるよ」

 ハルキの視線はこちらに向けられた。

「アカネさん、1兆ゴールドも払ってよかったんですか。生活は問題ないですか?」

 3京ゴールドを稼ぐ女性にとって、1兆ゴールドは1万円、2万円を渡すのと同じレベル。懐には微塵の痛みもなかった。

「うん、全然問題ないよ。私にとっては、おこづかいレベルのお金だから」

 ハルキの二つの瞳は、大きく見開いていた。

「アカネさんは、どれだけのお金を持っているんですか?」

 アカネはざっくばらんに、自分の所持金を伝える。

「総資産は2.5京くらいかな。100000年くらいは働かなくても、生きていくことができるよ」

 ハルキは知らない単位だったからか、クエッションマークを大量に浮かべていた。

「2.5京?」

「ミライさんに渡した、25000倍の金額だよ」

「金額は明らかにおかしいです。どのようにすれば、莫大な金額を稼げるんですか?」

「空気のないところで幽霊退治、水をきれいにする仕事をした。その2つをしたことで、3京以上のお金をもらえた」

「幽霊退治はどのようにするんですか?」

「空気のないところで、浄化魔法を使用するの」

「空気のないところですか?」

「そうだよ。私は空気いらずのスキルを所持しているから、ピンピンとしていたよ」

 裏世界に行ったときも、異常を感じることはなかった。空気いらずのスキルは、人間界の常識を覆す能力である。

 幽霊退治では、除霊能力も活躍した。こちらを持っていたからこそ、スムーズに仕事を終えることができた。

「水をきれいにする仕事は、どんなことをするんですか?」

「水の中にたまっている塩分、毒を抜く仕事だよ。魔法を使用することで、すぐにきれいにできたよ」

 魔法で水を浄化したあと、テオス、ソラに分析してもらった。成分を見てもらうことで、信憑性を高めるようにした。

「数カ月後くらいには、酸素村の魔物退治に出かける。こちらについても、大金をもらえると聞いている」

 テオスの話によると、1~2京の報酬をもらえるといっていた。20パーセントの付与金を払っても、8000兆ゴールドは残る計算になる。

「アカネさんの仕事は、常人離れしたものばかりですね」

「同じことをしていても、お金はもらえないよ。真の勝者になれるのは、特殊能力を所持してい
る人間だよ」

 1つでもありえない能力を、無限に所持する。お金持ちになるための条件を、きっちりと満たしている。

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