126章 おつかれアイドル
アヤメは目を覚ます。時計の針は、午後の2時を回っていた。
「アヤメちゃん、体の疲れは取れた?
「全然だよ。あと、3~4時間くらいは眠りたい」
アヤメは7年にわたって、厳しい生活を続けている。1日の睡眠くらいでは、体の疲れをいやすのは難しいようだ。
シノブは他の客がいることに、本気で驚いていた。マイも予想外だったのか、目が点になっていた。
「シノブちゃん、マイちゃんにいってなかったけど、アヤメちゃんがやってきているの」
伝えるのを忘れたのではなく、存在そのものを忘れてしまっていた。
「アヤメちゃんは、どうしてここにやってきたの」
シノブの質問に、アヤメは簡潔に答える。
「ミサキちゃんに会うためだよ」
アヤメの視線は、ミサキにむけられた。
「ミサキちゃん、膝枕をしてほしいです」
「うん。いいよ」
ミサキが膝枕の体勢を作ると、アヤメはすぐさま横になった。
「ミサキちゃんの暇枕は最高だニャー。体の疲れを吹き飛ばせるニャー。ストレス解消にもってこいだニャー。1時間、2時間であっても横になっていられるニャー」
羞恥心を気にすることなく、心身を休めることだけに重きを置く。なりふり構っていられない気持ちが、はっきりと伝わってきた。
マイはリラックス中の女性に、柔らかい視線を送っていた。
「アヤメちゃんは、膝枕を気に入っているんだね」
「うん。ミサキちゃんの膝枕は最高だニャー」
シノブはうんうんと頷いた。
「ミサキちゃんの膝枕は、嫌なことを忘れさせてくれる」
アヤメは太ももをさすった。
「ミサキちゃんの太腿をさすると、さらにストレス解消できるニャー」
シノブは賛同した。
「そうだね。ミサキちゃんの太腿は、とってもマイルドだよね」
マイも頷いた。こちらも膝枕を気に入っているようだ。
アヤメの手はぴたりと止まった。どうしたのかなと思っていると、吐息を立てて眠っていた。
あと30分くらいで空腹になると思われる。空腹になるまでに、眠っている女性は起きてくれるのだろうか。