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114章 仕事?飲食会?サイン会?

 3番テーブルのお客様から、思いがけない注文が入った。

「ミサキさんに、塩焼きそばを30人前」

 ミサキの大食いを、店の名物として売り出している。その影響からか、毎日のように焼きそばの注文を入れられる。店員として働くのではなく、焼きそばを食べるためにやってきているみたいだ。

 焼きそばの注文数には上限があり、午前中は30人前までとなっている。ミサキの胃袋をもってしても、それ以上は厳しい。

 午後から勤務する場合は、20人前を追加注文できる。午前と午後に勤務した場合、1日で50人前の焼きそばを食べることもある。50人前の焼きそばを食べきった場合、夕方の5時くらいまでは、何も食べる必要はなくなる。1日8~10食女性は、1日4~5食女性に生まれ変わる。

 焼きそばを食べている間も、時給は発生する。お金をもらいながら、おなかを満たせるのは天国といえる。ご飯を食べながらお金をもらえる仕事というのは、通常では絶対にありえない。

 焼きそばを食べる以外の仕事もある。最近はそちらがメインとなりつつある。

「ミサキさん、サインをください」

 アヤメ、ココロによる宣伝効果なのか、サインの要望を数多くなされる。1日平均にすると、50~100人くらいにサインする。焼きそば店で働いているのに、サイン会の様相を呈している。

 焼きそばを注文せずに、ミサキのサインだけを求める人もいる。焼きそば店にやってきたのだから、焼きそばを食べてほしい。

 ミサキのサインは、1枚で200ペソ。焼きそば1人前は5ペソなので、40倍の値をつける。

 サインに応じた場合、1枚で120ペソの特別時給を支給される。時給の12倍ということもあり、非常に効率のいい仕事となる。80ペソについては、従業員手当、設備代などに充当される。

「サインになります」

 サインをしたあとに、握手を無料サービスがある。希望者全員に対して、1秒くらいの握手をする。

 女性だけでなく、男性とも握手をする。嫌な気分になることもあるものの、ドキドキとすることもある。大きな恩恵をもたらす一方、諸刃の剣にもなりえる。

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