112章 他の社員も出社
ナナ、ホノカが出社する。勤務開始時刻の20分前だった。
「シノブちゃん、ミサキちゃん、マイちゃん、おはようございます」
シノブ、ミサキ、マイの順番で挨拶を返す。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます」
1週間前に入ってきた、新人のユタカが出社。見た目はおっとりしているものの、作業能力は非常に高い。仕事になったときに、エンジンの入るタイプである。
ユタカはアイドル出身ではない。焼きそば店においては、異色の経歴といえる。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
シノブが頭を下げる。
「ユタカさん、よろしくお願いします」
朝のメンバーは全員揃った。店の広さからすると、かなりの大人数である。
店内にある厨房の数は3。シノブ、マイ、ナナ、ホノカ、ユタカは交代で、焼きそばを作っていく。焼きそばを作っていないときは、ミサキのフォロー、材料の買い出しなどをする。
アオイ、ツカサはおっちょこちょいであるため、多忙な時間帯を避けることがほとんど。そのこともあって、顔を合わせる機会はほとんどなかった。2人は元気に過ごしているのかな。
ユタカは元気のない女性に、声をかけていた。
「マイさん、どうかしたの?」
先輩であっても、ため口で話しかける。上下関係のなさは、店の長所であるといえる。
「ううん。なんでもないよ」
「つらいことがあったら、いつでもいってね」
「ユタカちゃん、ありがとう」
マイは気持ちを切り替えたのか、いつもの陽気さを取り戻す。シノブ、ナナ、ホノカ、ユタカはそのことに対して、胸をなでおろしているように見えた。