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「つまり、お父さんも菜摘さんと一緒で…大好きな菜摘さんの為にお粥を作ることに、酔っていたんだと思います。迷惑なんかじゃないと思います。菜摘さんのことを大好きならば……むしろ菜摘さんの為に何かをすることそのものが、とても幸せで暖かくて、まるで夢みたいに覚めてほしくなくて…そんな感覚だったんじゃないですか…?」
「…隼くん……」
「……僕も、同じです……。まさに今、僕がそうなので何となく分かるんです。僕は菜摘さんの為にお粥を作ることも看病することも、隣で笑い合うことも他愛ない話をすることも……全部夢や酔いのように、覚めてほしくないくらい幸せなことです……。」
「……」
「だから菜摘さんは、迷惑だなんて思わないで下さい。」
僕の下手な説明で伝わっただろうか。
菜摘さんは泣きそうな嬉しそうな困ったような顔をしている…。
「…お粥、できました。」
天の川のように細かく掠れた湯気が出ているお粥は、小さな白い器に入り、まるで出来たての暖かな気持ちを包み込むかのように、僕と菜摘さんの間に置かれている。
今目の前にあるこのお粥を菜摘さんに食べて喜んでもらうこと……。
それも、僕にとっては小さな夢であり理想であり願いだ。
そんなことをわざわざ考え願ってしまう時点で、僕は菜摘さんに対して、他とは違う何かを感じているのかもしれない。