バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

2

「隼くんてさ、いつも土日は何して過ごしてるの?」

6月の湿った空気が頭上を吹き抜けたある日。

日が長くなってくるに連れて、僕が菜摘さんと話せる時間も延びてゆく。

「日曜日はテニスの練習があるので、1日中テニスしてます。土曜日は午前中に家庭教師の先生が来るから一緒に勉強をして、午後からはテニスの友達と遊んだり、お姉ちゃんが遊びに連れて行ってもらったりしてます。」

「結構ハードなんだね…!お姉さんは何歳?」

「24歳と14歳です。特に、一番上のお姉ちゃんが車で色んなところに連れて行ってくれるんですよ。」

「24歳かぁ…私のひとつ年下だね。例えばどこに行くの?」

「美術館に行ったり博物館に行ったり、映画を見に行ったりしてます!」

「なんか凄いなあ。博識って感じだね。教養がありそうな姉弟だ。」

「そんなことないですよ。純粋にその場の雰囲気とか作品を楽しんでるだけです。」

「……じゃあ隼くんはさ、普通の子供たちが行くようなところにはあまり行く機会がないの?…例えばゲームセンターとか、カラオケとか、ファストフード店とか。」

「…そういえば行ったことないかもしれないです。行ってみたいなとは思うんですけどね」

「じゃあ、今度私と行かない?」

「えっ?!」

「今週の土曜日、家庭教師の勉強が終わり次第ここに集合ね!私が隼くんに、新しい世界を見せてあげる!」


何故か自信満々な笑顔で僕を誘う菜摘さんの言葉に、僕は思わず頷いた。


菜摘さんは時々、こんな風に突拍子も無いことを言い出すことがある。


だけど僕は菜摘さんの手の引く方へ付いていけば、必ず新鮮な出会いがあるような…

そんな気がしてならなかったのだった。

しおり