70章 お客様との接し方
アヤメは笑うのをストップする。
「こんなに笑ったのは、人生で初めてだよ」
アヤメは左の掌を、ミサキのおなかに伸ばそうとする。ミサキは触られたくない気分だったので、おなかをガードする。アヤメは心を読んだのか、左の掌をひっこめる。
「ミサキちゃん・・・・・・」
おなかの音を笑われたことで、いつにもなく不機嫌だった。こんなにモヤモヤしたのは、人生で初めてかもしれない。
アヤメは気まずい空気を感じたのか、頭を深く下げた。
「ミサキちゃん、ごめんなさい」
2人に気まずい空気が流れているなか、シノブが塩焼きそばを持ってきた。
「ミサキさん、塩焼きそばができたよ」
30人前の塩焼きそばを見たことで、大きなゲップをする。
シノブは右の掌を、ミサキの右肩に乗せた。
「ミサキさん、アヤメさんを喜ばせてくださいね」
シノブの言葉を聞いて、怒りを鎮めることにした。どんなに失礼な人であっても、お客様であることに変わりはない。
ミサキは割り箸を割ったあと、焼きそばを豪快にすすった。おなかがすいているからか、食べるスピードは早かった。