66章 アイドル引退
ミサキは社員旅行を終えて、自宅に戻ってきた。いろいろなことがあったものの、それなりに楽しめたと思う。
本日のために持参したおにぎりは、1個も残っていなかった。90個近いおにぎりが、ミサキの胃袋に収まることとなった。
90個のおにぎりを食べた胃袋は、さらなる食事を求めている。ミサキは自宅にある自販機で、ラーメン、うどん、餃子、ハンバーガーなどを食べることにした。炭水化物中心にすることで、おなかを満たすのを目的とする。
ミサキはテレビをつけると、「クドウアヤメ、アイドルを電撃引退」と大きく表示された。青天の霹靂の出来事に対して、体が硬直することとなった。
テレビ画面には、クドウアヤメが映される。生で見たことがあるからか、前回ほどのインパクトはなかった。生で接したときは、アイドルとしてのオーラ、自負などを感じた。
「クドウアヤメは今年を持ちまして、アイドル業から身を引かせていただきます。これからの活動については、未定となっています」
アヤメに対して、20くらいの女性が問いかける。容姿だけを見ると、こちらもアイドルをやっていたのかなと思わせた。
「アイドルをやめるのはどうしてですか?」
「個人的な事情です。それ以外については、お答えすることはできません」
トップアイドルを続けることで、ビッグマネーを生み出すことができる。彼女は自らの事情価値を、自分で手放そうとしている。
「これまで応援してくださったファンの皆様、関係者の皆様には、感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました」
アヤメは一礼すると、テレビ画面からいなくなった。